黒木亮さん著者
黒木 亮
講談社
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よいけど限界あり
アクの強い人物たちと現場が排出権相場を盛り上げる。
排出権取引の仕組みがよくわかります
CDMの欺瞞を突く
CO2削減問題、まずはこの一冊から。
好きな作家さんの一人である著者。
銀行、証券会社、商社を経て作家になられているという事で、取引実務に関しての詳細や情景がサックリと描かれる中にもリアリティーが感じられる。
本書の内容は、今後日本に重くのしかかるであろう魔の京都議定書におけるCO2削減のための排出権取引にまつわる、
「どのように排出権を生み出し」
「どのように売買換算するか」
「どういった議会で認証される」
といった、よくある「排出権取引とはこういうものです」的な説明本には難しく書かれがちな内容を、小説を通してわかりやすく表現されている。
何事もそうだと思うのだが、物事を擬人化し、ストーリーだてて表現する事により、各人でイメージを作っていくので、難しく思いがちな事も理解しやすくなる。
そういった意味で、実社会の事柄を小説という社会の中で、架空の人物に体験させ読み手を魅了していくというのは、コア過ぎても一般うけしないし、かといって周知の事実だけを並べたてられても「で?」と言う感情しか残らないので本当に難しいと思う。
実情を小説化するのは、情報の多寡に十分注意しつつ登場人物にリアリティーをつけ、さらに登場人物に感情移入できる物こそ面白いのだ。
そういった事を本書はクリアし、読みやすく、そして引き込まれるように一気に読んでしまった。
主人公である女性の地球環境部の室長が、案件探し、現場調査、資金調達を、主にアジアを中心にビジネスを形作るところからクロージングまでが描かれるが、それと平行するように女性の会社をカラ売りするカラ売り屋のストーリーが走り、最後までハラハラさせられる。
排出権取引に関心がある方や、投資会社、証券取引に興味のある方は、勉強としても読み物としても十分に楽しめる内容だと思う。
巻末に、業界用語の簡単なインデックスもあるので、改めて言葉の意味を確認するのにも役立つだろう。
とりあえず、自分はハードカバーの本書を持ち歩き、通勤電車で読み上げたのである。