江上剛さん著者
江上 剛
講談社
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M&Aの経済小説である。
久しぶりに経済小説が読みたいなと本屋さんに参上してみるも、ひいきにしている作家さんの新刊も出ておらず、何か無いかと書店の棚を端から端まで探索して見つけた本書。
そもそも自分は本が大好きなので、書店に一歩足を踏み入れると何時間もジロジロと徘徊する。
そして衝動買いに走る。
単行本の小説ならまだ可愛いが、ハードカバーの翻訳本なんて手にしたら1ヶ月のお小遣い諭吉がさよならと去っていく。
まぁそんなウダウダ話はさておき、
本書は2008年に文庫化しているので新刊書ではない。
ちなみに今まで自分が読んでいた経済小説には、日常に転がっているような色恋沙汰の話は殆ど垣間見る事がなく、主に市場背景や資本主義社会の渦に巻かれる人間模様が描かれているものが多い。
だが、本書は、銀行員から買収ファンドに転職した主人公の案件が、愛する彼女の父親の会社であった事から、仕事だけでは無くプライベートの恋愛まで巻き込まれての話に展開し、なかなか新鮮だった。
とは言え、自分は恋愛小説なんて全く読まない。
にも関わらず主人公、主人公の彼女、そして二人を良く知る元同僚の友人が、買収のいざこざから彼女の婿候補として意図しないところでプチ三角関係に!
これには本題のM&Aストーリーを差し置いてハラハラさせられ
「あぁ!!!ちょっと待ってぇ!!!主人公急いでぇ!!!」
なんてな気持ちでページが進んだ。
乙女ですなぁ。。。てへ。
さて、M&Aや投資は生き物なので案件期限はつきもの。
一代で築いた我が子のような会社を、上場しているが為にある日突然「買います」宣言をされ右往左往となる社長兼主人公の彼女のパパ。
銀行の融資返済を迫られ窮地に立たされるパパ。
資本主義社会における法律を全く知らず、我武者羅に走ってきたワンマン経営者にとって痛恨の一撃!!
と言うより、ただ社会のため従業員のため自分のため家族のために働いてきた男にとって寝耳に水の買収話に周りは全て敵に見えるし、スピードと情報が命の中で数字や法律に疎い自分が全面に押し出され苦々しい。
築き上げた会社が大きければ大きい程自信も自負も大きくなる。
そこに横槍を「エイッ!」なんて入れられたら人として拒絶反応が出るのは至って普通の反応だろう。
それも相手は可愛い娘と結婚を前提とした恋仲の男。
てな事があり、主人公の悶絶、融資引き上げのタイミングを見守る銀行員、名乗りを上げる別買収者、と登場人物がパラパラと現れる。
どの人物も何となくイメージが出来るあたりは、やはり作家さんって凄いなぁと感嘆。
結局の落とし所とそこに行き着く手段には首を捻るが、男の世界で牙を剥き出しあう経済小説もいいが、たまにはロマンス経済小説も良いのかも。
今更な本かも知れないが、興味があれば一読あれ!