林 總さん著者
林 總
日本経済新聞出版社
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前作「団達也の不正調査。。。」の続編。
前作で会計帳簿のつじつまの合わない事柄から現場を確認し、企業の組織ぐるみの不正を暴いたところから物語は始まる。
主人公団達也は、シンガポール大学を首席で卒業したMBA保持者。
そんな前途エリートまっしぐらに見える主人公は、師を仰ぐカリスマコンサルタントの助言により中小企業の経理部長から実務を経験していく。
まぁ、そもそも外部委託ならまだしも、実務未経験者を部長のポジションに置くという設定も設定だが、社長の口聞きで実際に有り得る話だったりすると首を傾げて唸ってしまいそうだが。
前作で不正を正したものの、「不正と知りながら会社のためだった」を口実に、会計操作に関わった全員がお咎め無しで始まっている本作。
と言うより、外からやってきて「不正だ!」と騒ぎ立て、今まで上手くいっていた会社をメチャメチャにしやがって!状態で煙たがれ工場出向を命じられる主人公。
では、不正を見過ごしてそのまま経営していたら?
前作でわかりやすく解説しているように、キャッシュフローが自転車操業、売上の付け替えが後に引けない状態になっていたこの企業、しかも今回新たな連帯保証の時限爆弾まで発覚したので、あっという間に資金ショート倒産まっしぐらだろう。
と言う事すら当事者達は理解出来ない。
この状況が読者としてとてもイライラさせられる。
そもそも微妙な手続きで行った連帯保証に対して、契約の事項能力が問われるが、そこは二代目社長の無能ぶりでカバーしている。
主人公は主人公で、組織を知らないため人の立場をわきまえず、まるで自分が経営者のような振る舞いをし、従業員達に反感をかう。
確かに正論を述べるのだが、相手に譲歩させてあげる場を作るのも力量。
人間、意固地になったら引くに引けないのだ。
それが本人のみならず企業で働く人々、関係者全員をも巻き込む最悪の事態になる場合は目も当てられない惨劇である。
経営者の器や資質なんてものを備えた人だけが必ずしも経営者になっているのではない。
既に傾き始めている会社を再生させようと言うからには、企業としての魅力、つまり再生させてまでも守っていかなければならない財産がなければならない。
それが前作で、どうでもいい男のプライドや嫉妬に埋もれさせられていた世界に誇れる特許ということで、外資ファンドを巻き込んでの争奪戦になる。
企業再生と言うからには色んな手法があるが、まずは資金調達が最優先。
この資金を銀行から借りるのか、株式、社債の発行、投資家の選別と言う事になってくるが、エリート頭をフル回転させる主人公の思いも空しく身内からの裏切りが横行する。これがあちこちで勃発するから読者としてはハラハラである。
株主総会に主人公を役員から外し、全てを思い通りに手にしようとする元専務の間中。前作で会社から追放されたにも関わらず返り咲こうとしている強かさには驚くというよりドン引き。。。
全ては劇甘の二代目社長の不甲斐なさに押し付けているところが何だか不快感。
主人公のシンガポール時代の同期仲間の外人(男女)がファンマネよろしく登場するあたりは、ハゲタカでお馴染みの真山仁さんの著書と設定やスタイルが似ていて更に心が引いていく。
主人公の激情的な性格も共感出来なかったので、会計の怖さや見せ方などの勉強にはなるものの、あまり好きな作品ではない。
ちなみに作品を悪く評価しているのではなく、登場人物が人間の醜い部分ばかりしか見せないので嫌悪するだけである。
ここまで感情に影響すると言うことは、作者の力なんだろうなぁ。
本作はシリーズ化として雑誌に連載が続いているようなのだが、次はもう読まないと思う。
そして今は真山仁さんの「マグマ」に着手し始めたのであった。