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ボランティアという病

著者:丸山千夏さん


「あなたは善意を押し付けていませんか」越権行為、必要のない物資、巨額の寄付金etc・・・の帯を見かけ、背表紙に書かれた問題定義に興味を持ち読破。
久しぶりの一気読みだったのだが、面白くて一気に進んだ訳ではない。むしろ、何が言いたいかわからないので先へ先へ進んだだけだ。

内容は、ジャーナリストである著者が、今年4月に起こった熊本地震の際にボランティアに立ち上がった公認・非公認の団体の行動の事実と噂を書き並べ、そもそものボランティアの歴史や過去の大震災時の様子が書かれているのだが、正直内容が浅い。

「そうなんだ・・・」と、自分も知らなかった事があり考えさせられるものもあるのだが、ジャーナリストの肩書があるのにネットで調べたような事しか書かれていなかったり、噂の事実を確認する為に熊本にいる団体に話を聞きに行かれているのに、本丸の責任者と対話が出来ていなかったり。その理由が「入れ違いで責任者が熊本にいなかったから」とも受け取れるような説明がチラリと書かれていて、一番裏どりをしなければならない内容なのに責任者とアポイントも取られず、突撃で現地入りしたものの団体加入1年にも満たない担当者に話を聞いているだけ、これでは根拠があるのかないのかの噂話をわざわざ本にする必要があるのだろうか?と思ってしまった。

小説ではないので起承転結が必要とは言わないが、非公認団体を批難したかったのか、著者本人はその団体を否定しようとしたけど、事実は藪の中、それとは別に行動力を褒めて、最初は悪者に描きながら本来はヒーローなんだよ、と読者を誘導したいのか、あちこちに話が飛んでは戻るので何が言いたいのかわからない。1冊の本というよりは本を書く前のドラフト資料の箇条書きを読まされた感じである。

とは言え、時として「何かしたい!」と思ってする人間の行動が、相手の状態も考えずに迷惑になってしまうというのは、指摘されなければなかなか気づかない。そう思うので気づきを題材にしている点では素晴らしいのに、内容が浅くなってしまった事が残念だ。4月の熊本地震発生から8月19日には本書の初版を出しているので、誰かに焦らされたのだろうか?と、妙に勘ぐってしまう。

自分は昨年10月に社内ボランティアで岩手県の釜石市に行った。釜石市は洪水被害にあったところで、動画サイトにも上がっているのだが、そこでボランティアを行っている団体の方々に対してコミュニケーショントレーニングを開催したのだ。
ボランティア団体も地元の方々で、彼等も震災で家や家族を失っていたりするのだが、色んな援助や補助を受け町は生活を取り戻し内側は整ってきている、次は復興へ向けて外側に向かってアピールをしていく活動が必要だ、ということでビジネストレーニングのボランティアだった。

震災から5年、色んなものが落ち着きを取り戻すと補助金の終了なども決まって来る。そうなると団体も解散し、各々仕事を探して社会復帰を行うことになる。
「何か自分でも出来ることを!」と思い立ち行動した人たちが、用が済んだら終わりというのも何だかなぁと当時は思っていたが、本書の一文に、
「他県からボランティアで来て頂くのは大変ありがたいが、そのまま居座らずに速やかに帰って欲しい」というのが地元民の本音としても書かれている。

自分が行った釜石市は、地元の人たちで作られた団体だったから少し話しは違うが、他県からのボランティアと地元民では、「協力してあげた」「協力してもらった」という意識しないにしろその関係性が出来る傾向にあるようだ。そして目に見えて何かを成し遂げた達成感は日常でなかなか感じることが出来ないので、大きな出来事で力を貸したことは心地よくなり居座ってしまうのかも知れない。

「ボランティアとは?」を考えるきっかけとしては本書は良かったのだが、如何せん残念な気持ちでいっぱいになる、という面もあり不思議な本である。
お勧めではないが、ボランティアについて改めて考えてみてはどうかと思い、今回久しぶりに読書レビューをしてみた。

自分は、これがきっかけになって読書スイッチが入ったので、積読山の登山を開始したのであった。

あたらしい哲学入門

土屋賢二さん著者
あたらしい哲学入門―なぜ人間は八本足か?
土屋 賢二
文藝春秋
売り上げランキング: 193163


「なぜ人間は八本足か」なる補足題名があったので気になってお買い上げ。
哲学は嫌いではない。
昔から「なんでだろう?」「なんでそうなんだろう?」と常に思っていたので、哲学の考え方に少し触れているのでは?!
と、勝手に思っている。

しかし学問としての勉強はした事がない。
シェイクスピアは好きで何篇か読んだが、ソクラテス、アリストテレスなんてのは一読もした事がない。
強いて言えば、かなり昔に「ソフィーの世界」と言う素人にも読みやすい哲学入門小説?を読んだのが近いかも知れない。
最近ではニーチェをわかり易くし、サルトルなんてのも人気があるらしい。

まぁ心して掛かろうと思って本作を手にしたのでは無いが、いざ読み始めると、筆者の語り口調に数ページで嫌気。
これは好き好きなのでどうしようも無いのだが、言葉尻が「〜よね」と読者に強要すると言うか
「自分は言い切らないケド、こういう事かどうかを読者が判断しているんですよ」
的な話し方は苦手だ。
そして本作はその口調が延々と続く。

同じ単語や言葉の復唱も1ページに何個あるんだい?
と、正の字で数えたいほど頻出。
サブリミナル読本とでも言い切りたいくらいだ。

まぁ「これが哲学的表現方法なんだよ?」と言うのであれば、致し方ない「自分は哲学は無しの方向で!」となる。

結局読み辛くて半分に達しないところで読破を断念したのだが、1点だけ「何言ってるのか全然わからない」という部分があった。

「自分と本人」の違い。
「自分がどんな感覚を持っているかを判定するのは、自分ではなく本人が最高の判定者である」※一部省略

と記してあり「自分」と「本人」を言葉巧みに使い分ける本書。
そもそも、語尾を無視してほぼ飛ばし読みしていたせいもあるのかも知れないが、すっかりついていけない事態になった。
すぐさま八つ当たり的に友人に不満をぶちまけると、友人は本書を奪い取り、問題の箇所の前後2〜3ページをサラリと読む。

「あぁ、なるほどね」
ものの1〜2分で理解する友人。

ぬ?なんだ?なんだ、なんだ?!!
目を丸くする自分。

「だからね、簡単に言うと自分は心で本人は脳」
2つ程例を出して説明され、ようやく納得。
本書半ページに渡って回りくどく書かれていた内容を、友人はものの数分で頭の固い自分に理解させてしまった。
もともとこの友人は説明の仕方は上手い。

それを踏まえて読むと、前半から半分まではこう理解させるために例題をウダウダと連ねている。
結局著者が何を書こうしているのかがわかったので志半ばで読破断念に至ったのだが、そりゃしょうがないか。
本作は入門ですもの。

久しぶりにちょっと毛色の違う読書であった。

王様ゲーム

金沢伸明さん著者
王様ゲーム (双葉文庫)
金沢 伸明
双葉社 (2011-10-13)
売り上げランキング: 14065


以前、本屋さんでハードカバーを見かけて「なんじゃら?」と気にはなっていたがスルーしていた本作品。
たまたま文庫化されたのを見かけてお買い上げした。

粗筋は、ある日突然1クラス全員に王様なる人から携帯電話で指令が飛ぶ。
名指しで指令を受けた生徒は24時間以内に従わないと罰が与えられるというもの。

この設定がなかなか心をときめかせたのだが、いざ読み終わって見ると
「えッ?」
と言う感想。

う〜ん。。。なんだろう。
これは小説と言うよりも、クラスにいる誰かが噂話をかいつまんで話した、みたいな感じ。
ミステリー好きな自分は、すぐに謎解きモードに入るから読み辛いのか、本作をホラー作品?としても『十三番目の人格 ISOLA』貴志祐介さんを読んだ時と雲泥の差。
まぁそもそもカテゴライズする事に意味がないか。

書き出しは細かめに描写しているものの、中盤からバシバシ人が罰により死ぬ。
解決作が一つも無いせいでクラス全員を被害者にしなければならないのかも知れないが、それにしても。。。。

ネットで詳細を見ると何やら携帯小説?と言う新ジャンル。
なんじゃそれ?
携帯発祥のお手軽に読める読み物を称するらしいが、こんな感じのものを読書としていたら読解力崩壊だろうなぁ。
ネット社会は良きも悪しきもあるが、無味無臭の知ったか増殖は注意。
自分もそもそも読解力に乏しいが、思い込みはとても危険。
言わなくても相手に伝わるなんてな神通力は日本の中くらいしか通用しないのだ。

本作品はまだまだ続きがあるようだが、自分は読まないだろう。
この後どうなるか?!
なんてな期待が全く持てないので。

最近も読破した本は多数あるがブログに紹介しきれていない。
本屋さんに立ち寄る度にお買い上げしてしまうため、未読本が山のようになっている。
読んだ側から感想書いて自分の備忘記録とするつもりなのに。

不当買収

江上剛さん著者
不当買収 (講談社文庫)
江上 剛
講談社
売り上げランキング: 549935

M&Aの経済小説である。

久しぶりに経済小説が読みたいなと本屋さんに参上してみるも、ひいきにしている作家さんの新刊も出ておらず、何か無いかと書店の棚を端から端まで探索して見つけた本書。

そもそも自分は本が大好きなので、書店に一歩足を踏み入れると何時間もジロジロと徘徊する。
そして衝動買いに走る。
単行本の小説ならまだ可愛いが、ハードカバーの翻訳本なんて手にしたら1ヶ月のお小遣い諭吉がさよならと去っていく。

まぁそんなウダウダ話はさておき、
本書は2008年に文庫化しているので新刊書ではない。

ちなみに今まで自分が読んでいた経済小説には、日常に転がっているような色恋沙汰の話は殆ど垣間見る事がなく、主に市場背景や資本主義社会の渦に巻かれる人間模様が描かれているものが多い。

だが、本書は、銀行員から買収ファンドに転職した主人公の案件が、愛する彼女の父親の会社であった事から、仕事だけでは無くプライベートの恋愛まで巻き込まれての話に展開し、なかなか新鮮だった。

とは言え、自分は恋愛小説なんて全く読まない。
にも関わらず主人公、主人公の彼女、そして二人を良く知る元同僚の友人が、買収のいざこざから彼女の婿候補として意図しないところでプチ三角関係に!

これには本題のM&Aストーリーを差し置いてハラハラさせられ
「あぁ!!!ちょっと待ってぇ!!!主人公急いでぇ!!!」
なんてな気持ちでページが進んだ。
乙女ですなぁ。。。てへ。

さて、M&Aや投資は生き物なので案件期限はつきもの。
一代で築いた我が子のような会社を、上場しているが為にある日突然「買います」宣言をされ右往左往となる社長兼主人公の彼女のパパ。
銀行の融資返済を迫られ窮地に立たされるパパ。

資本主義社会における法律を全く知らず、我武者羅に走ってきたワンマン経営者にとって痛恨の一撃!!
と言うより、ただ社会のため従業員のため自分のため家族のために働いてきた男にとって寝耳に水の買収話に周りは全て敵に見えるし、スピードと情報が命の中で数字や法律に疎い自分が全面に押し出され苦々しい。

築き上げた会社が大きければ大きい程自信も自負も大きくなる。
そこに横槍を「エイッ!」なんて入れられたら人として拒絶反応が出るのは至って普通の反応だろう。
それも相手は可愛い娘と結婚を前提とした恋仲の男。

てな事があり、主人公の悶絶、融資引き上げのタイミングを見守る銀行員、名乗りを上げる別買収者、と登場人物がパラパラと現れる。
どの人物も何となくイメージが出来るあたりは、やはり作家さんって凄いなぁと感嘆。

結局の落とし所とそこに行き着く手段には首を捻るが、男の世界で牙を剥き出しあう経済小説もいいが、たまにはロマンス経済小説も良いのかも。

今更な本かも知れないが、興味があれば一読あれ!

殺人鬼-覚醒編-

綾辻行著者人さん
殺人鬼  ‐‐覚醒篇 (角川文庫)
綾辻 行人
角川書店(角川グループパブリッシング) (2011-08-25)
売り上げランキング: 6993


今年、著者の「館シリーズ」をたまたま手に取り、読者の裏を書く驚きの謎解きにすっかり夢中になり一気に読破した。

しかし、シリーズも「暗黒館の殺人(一) (講談社文庫)」から「びっくり館の殺人 (講談社文庫)」になると、SFタッチと言うか一応ミステリーなんだけど、それまでのドンデン返しと違って何だか残念な気分になっていた。

「館シリーズ」以外にも著者の作品はあるのだが、何となく手を出していない。
そんな中で久しぶりに書店の平積みで見かけた本書。
裏面の内容紹介で「読者を待ち受けている罠」と言う文字に惹かれお買い上げしてみた。

内容は、とあるサークルの仲間達がオフ会で登山をする事から始まる。
中学生から大人の男女達を待ち受ける惨劇!
相変わらず偶然なり必然なりの半隔離状況から次々と繰り返される殺戮。
犯人は一体?!!

ちょっと広告っぽく書いてみたが、主要登場人物が紹介され、次々に何者かによって殺されていき、その犯人探しを読者に委ねる。
なんてなミステリー小説かと思いきや、今まで読んだ著者の本と違い、登場人物達の殺され方が半端なくエグイ。。。
殺人ではなく殺戮と言うのが正しい。

昔、スティーブン・キングやクライブ・パーカー等の似たようなホラー?スプラッター?小説を読んだ事があるが、彼等の作品は人間のエグイ部分を表面化させたおぞましい表現がなされ頗る気持ち悪い。

当時、平行してシェイクスピアも読んでおり、人間の本当の姿なるものを探求していたように思う。
20歳前後によくある社会と自分の内面、将来を見つめる悩める時期のことだ。
善と悪の「狭間」って。。。
無知の癖に随分背伸びした難題に取り組んだものだ。

?!話がすっかり反れてしまったが、そんな迷える子羊時代から成熟途中の今、またスプラッターに出会うとは。。。

正直、世の中の粋も甘いもほろ苦さも甘噛みしてきている今、本作のような殺戮スプラッターはお断りである。
読み人によっては嫌悪感すら感じるだろう。
前述したキングやパーカーの場合は人間の深層心理に潜む的なものを読み取れたが、本作は現代を表しているのだろうか、無機質の不快感しか残らなかった。
一応の犯人探しを試みてみたものの、結論は腑に落ちないものだった。

著者はかねてから謎解きミステリーの法則は絶対に遵守している。
簡単に言えば
「解決するにあたり、読者の知らない情報から結論を出してはいけない」
と言う事で、著者の作品は「あぁ、そう言えば!」的な伏線が沢山あり、それを言葉巧みに惑わすところが醍醐味だった。
ネタばれにならないように感想を述べると、
「マンネリが。。。。」
垣間見えている気がする。

とりあえずお勧めはしないが、著者はSFミステリー作家なのかなぁと首を捻る一作であった。

MBA経理部長・団達也の企業再生ファイル

林 總さん著者

前作「団達也の不正調査。。。」の続編。

前作で会計帳簿のつじつまの合わない事柄から現場を確認し、企業の組織ぐるみの不正を暴いたところから物語は始まる。

主人公団達也は、シンガポール大学を首席で卒業したMBA保持者。
そんな前途エリートまっしぐらに見える主人公は、師を仰ぐカリスマコンサルタントの助言により中小企業の経理部長から実務を経験していく。

まぁ、そもそも外部委託ならまだしも、実務未経験者を部長のポジションに置くという設定も設定だが、社長の口聞きで実際に有り得る話だったりすると首を傾げて唸ってしまいそうだが。

前作で不正を正したものの、「不正と知りながら会社のためだった」を口実に、会計操作に関わった全員がお咎め無しで始まっている本作。
と言うより、外からやってきて「不正だ!」と騒ぎ立て、今まで上手くいっていた会社をメチャメチャにしやがって!状態で煙たがれ工場出向を命じられる主人公。

では、不正を見過ごしてそのまま経営していたら?
前作でわかりやすく解説しているように、キャッシュフローが自転車操業、売上の付け替えが後に引けない状態になっていたこの企業、しかも今回新たな連帯保証の時限爆弾まで発覚したので、あっという間に資金ショート倒産まっしぐらだろう。

と言う事すら当事者達は理解出来ない。
この状況が読者としてとてもイライラさせられる。
そもそも微妙な手続きで行った連帯保証に対して、契約の事項能力が問われるが、そこは二代目社長の無能ぶりでカバーしている。

主人公は主人公で、組織を知らないため人の立場をわきまえず、まるで自分が経営者のような振る舞いをし、従業員達に反感をかう。
確かに正論を述べるのだが、相手に譲歩させてあげる場を作るのも力量。
人間、意固地になったら引くに引けないのだ。
それが本人のみならず企業で働く人々、関係者全員をも巻き込む最悪の事態になる場合は目も当てられない惨劇である。
経営者の器や資質なんてものを備えた人だけが必ずしも経営者になっているのではない。

既に傾き始めている会社を再生させようと言うからには、企業としての魅力、つまり再生させてまでも守っていかなければならない財産がなければならない。
それが前作で、どうでもいい男のプライドや嫉妬に埋もれさせられていた世界に誇れる特許ということで、外資ファンドを巻き込んでの争奪戦になる。

企業再生と言うからには色んな手法があるが、まずは資金調達が最優先。
この資金を銀行から借りるのか、株式、社債の発行、投資家の選別と言う事になってくるが、エリート頭をフル回転させる主人公の思いも空しく身内からの裏切りが横行する。これがあちこちで勃発するから読者としてはハラハラである。

株主総会に主人公を役員から外し、全てを思い通りに手にしようとする元専務の間中。前作で会社から追放されたにも関わらず返り咲こうとしている強かさには驚くというよりドン引き。。。

全ては劇甘の二代目社長の不甲斐なさに押し付けているところが何だか不快感。
主人公のシンガポール時代の同期仲間の外人(男女)がファンマネよろしく登場するあたりは、ハゲタカでお馴染みの真山仁さんの著書と設定やスタイルが似ていて更に心が引いていく。

主人公の激情的な性格も共感出来なかったので、会計の怖さや見せ方などの勉強にはなるものの、あまり好きな作品ではない。

ちなみに作品を悪く評価しているのではなく、登場人物が人間の醜い部分ばかりしか見せないので嫌悪するだけである。
ここまで感情に影響すると言うことは、作者の力なんだろうなぁ。

本作はシリーズ化として雑誌に連載が続いているようなのだが、次はもう読まないと思う。

そして今は真山仁さんの「マグマ」に着手し始めたのであった。

MBA課長団達也の不正調査ファイル

林總さん著者


久しぶりの経済小説。
小説とは言え、実践的な会計スキルが身につくと謳っているだけあって、なかなか読みやすい内容。

物語りは、これからの経済を見据えて、あえてハーバード大学というブランドを選ばずシンガポールの大学でMBAを学び首席で卒業した主人公団達也が、メーカーの中小企業に就職する事から始まる。

ここまでだと、ある一流サラリーマンのサクセスストーリーに見えなくも無いが、実際は主人公本人が選択した道ではなく、全ては師と仰ぐカリスマコンサルタントの宇佐美秀夫の助言で進んでいる。

実社会においても、アジア経済の中心は日本ではなくシンガポールに集中していると感じているので、ハーバードではなくシンガポールを選ばせる宇佐美氏には頷ける。

そもそも大学とは何をするところか?
勿論学問を学びに行くところでもあるが、とても重要な人脈形成というものがある。
日本人が世界に羽ばたきたい!
と思うのであれば、欧米社会に飛び込むより、アジアで力を持っている方が十分世界を渡り歩けるだろう。
だって自分らアジア人だもの。

それはさておき、主人公は成績優秀だが実務経験が無い。
それ故に学んだ知識とリアルな現場のギャップに奮闘する主人公。

と、まぁここまでは経済小説の設定では珍しくも無いのだが、本作は登場する人物達が曲者ばかり。
と言うより、実社会にも未上場の家族経営会社において無きにしも有らずな人物像にハラハラさせられる。
生まれながらの悪しき心ではなく、それが当り前だと何の疑いも持たずにやっていた事が不正だったと。
そういう事は会計だけではなく普段の生活でも沢山ある。
知らないという罪だな。

管理会計を学びたい!
製造業の複雑な会計基準のリスクプロセスって??

なんてな事を実践の応用で学びたい人には、主人公が入社した会社の帳簿から不正を暴くまでの説明を、BS、PLの表に書き込みして説明しているので文字だけではない目で確認が出来るので理解しやすいだろう。

本作は一気に読み終えた。
「次はどうなるんだろう!」
ワクワク!!!
と言う心躍ったから読み進んだのではなく、登場人物達がドロドロと裏でうごめき、その展開にハラハラするのだ。

本にはいろんな読み方、読ませ方があるとは思うが、本作は楽しみで読み進んだというより、「ヤバイ!早く、早くぅ!!!」という危機感とある種の不快感から結末への安堵を求めて進むのだ。

相変わらずの回りくどい書き散らかしで的を得ないが、リアル感が感じれる本書は現実逃避をしない作品としてお勧めである。

暗黒館の殺人一〜三

綾辻行人さん著者
暗黒館の殺人(一) (講談社文庫)

暗黒館の殺人(二) (講談社文庫)

暗黒館の殺人(三) (講談社文庫)

暗黒館の殺人(四) (講談社文庫)

4巻読破である。

。。。辛かったぁ。。。
著者の館シリーズを気に入って、読んでは次、呼んでは次、と猛スピードで読み進めたのだが、本作は全く読み進まない。
3月の始めに読み始めたのに、読み終わったのが昨夜。
つまり1ヶ月がかりである。

著者の作品(と言っても館シリーズしか読んでない)は、推理心をかき立てられ
「1日で読破!」なんてこともしばしばだったのに、本作に限り最初のページから歩みが鈍かった。
よくよく調べてみると、館シリーズは「黒猫館の殺人」から12年?の月日が流れてからの執筆だった様子。

むむぅ。。。
その間に作風が変わったのかなぁ。。。

とにかくノロノロと歩みを進めたのだが、本作品、まずお馴染みの登場人物が、建築家中村青司氏の作品である暗黒館を訪れる所から始まる。

目指す道筋で大きな地震により事故に合い一時的な記憶障害が起こる、なんて設定なのだが、奇しくも本作品を読み始めてから3月11日に東日本大震災が現実でも起こる。
かと言って直ぐに内容が結びついた訳でも無いが、その後、自分は暫く悪夢にうなされる事になる。

この話は外伝として書き散らかそうと思うので置いといて、語り部が記憶障害により口が聞けなくなり、続々と登場する館の住人は奇怪な人ばかり。
いや、奇怪ではなく心に傷を持ち精神的に崩壊してしまった人々が現れる。

いつもの語り部に変わり、もう一人の語り部が現れるのだが、その人物も過去に事故により一時的に記憶喪失になった、なんてな設定で実は個人的にウンザリ。
著者の作品は推理後のどんでん返しが心地よくて気に入っていたのだが、ここまで曖昧な設定で情報を提供されるろ、推理する気が全く起きない。
どうとでも出来るし、語り部の勘違いと言ってしまえば何でもあり。

館の住人には、産まれつき結合した双子の姉妹、早老病の少年、精神不安定の母親、あげく館で執り行われる儀式、推理小説を通り過ぎてホラー色の強いイメージに変わる。
自分は、推理小説は好きだがホラー小説は好きではない。

そんな拒絶心からなのか、あれだけ楽しみにしていた館シリーズを読むのは気が重かった。
あげく、読破した先にあったのは、

「ぬ?幻想物語か〜いッ!!!!」

と、突っ込みたくなる始末。
最終的に主人公的な語り部が数々の謎を書き散らすが、
「聞いても答えてくれないだろう」
と、諦めてしまう。

そ、そんなんありか〜いッ!!!
2度目の突っ込みである。

まぁ、何故こんなに恨み節になるかは別途書き散らかすが、とにかく本作品は自分にとって、とても残念な作品となったのであった。

黒猫館の殺人

綾辻行人さん著者
黒猫館の殺人 (講談社文庫)
綾辻 行人
講談社
売り上げランキング: 59551

館シリーズの6作目である。

奇妙な館を設計する建築家中村青司の作品「黒猫館」を舞台に巻き起こる殺人事件。
エピローグからお馴染みの鹿谷氏、江南氏が登場するのでシリーズを通して読んでる自分は心が逸る。

今回の手法は、とある記憶喪失の老人が持つ焼け残った手記から一連の事件が表ざたにされる。
手記を持った老人は一時的な記憶喪失のため、自分が綴った手記なのか、それとも推理作家に憧れて書き上げた小説の真似事なのか?

雲を掴むような状況の中、実在の話なのかを確かめるべく2人が立ち上がるのだが、シリーズを読みなれた自分としては、館にカラクリがあるのも承知、一人称で語り自分達と一緒に推理をしている人物こそが犯人という事が有りうるのも承知、つまり作中誰も信用せずに読み進む術を熟知しているので多少の事には惑わされない。

事件は、黒猫館と呼ばれる館でお坊ちゃま学生達の行き過ぎた行動で起こった死亡事件。
自殺?他殺?事故?
いつもの事件時の密室が真相を混乱させる。
今回の事件は当事者達がクスリで正気では無かった事により、全員が加害者の可能性を否定出来ない。
未来ある学生達がどうするか?
エドガー・アラン・ポー「黒猫」作戦?!

。。。あんまり書くと読む前にピンッ!ときて読み応えが無くなるので、お戯れはココまでにするが、館に黒猫の風見鶏(猫)はあるものの、
「そもそもの由来はこのシュチュエーションを描きたいがために黒猫館にしたな!」
なんてニヤリとしてしまった。

まぁ、そんな密室事件から第二の事件が発生するので推理好きには飽きさせない展開。
そもそもシリーズ化の作品はマンネリが多くなり、ファンを飽きさせてしまうという危険がある。
そこを上手く著者はスルリと潜り抜け読者を出し抜く。

自分は、本作の犯人も紆余曲折しながらも的中する事が出来たが、その後のどんでん返しにはまたしてもヤラレタ。
「そう来るかいッ!!」
思わず本に突っ込んでしまった。

多分、著者の本シリーズで犯人を的中する読者は多いと思うが、その後の展開までを読める読者は少数では無いだろうか。
自分が騙されるから負け犬の遠吠えに聞こえるが。。。

相変わらず、最終的に尻尾を巻かされる著者の次作長編を読み始めた。
現在、長編1〜4部作と他1作で館シリーズが終わっている。
久しぶりにはまった日本人作家だったのでまだまだ館シリーズを書き散らかして欲しいが、とりあえず今ある作品の推理に没頭せねば!なのである。

影響力の武器

ロバート・B・チャルディーニ著者
影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか
ロバート・B・チャルディーニ
誠信書房
売り上げランキング: 683


非情に興味深い人間心理の本である。
故にとても時間をかけて読破した。

人の考えは十人十色とは言うものの、ある同条件下において不思議な程同じ行動や心理を抱く確立が増加する。
そういった事象について、実験をともなった社会心理学の著者が行った研究成果を認めたのが本書とでも紹介しておこう。

社会心理学!
なんて言うと急に興味を喪失してしまう人もいるかと思うが、お堅気な書物に関しては読まず嫌いをする前に目次だけでも目を通して見ると、意外と書名とは裏腹で自分が想像しているよりも敷居の低い内容だったりする。

最近では、一般受けしやすいように身近な事柄を比較対照物にしたエッセイ風な本も多数あるが、よくよく読んで見ると対象物は慣れ親しんでいるものなのに、結局難しい隠喩が書き散らかしてあり、最初の数ページで眠りの世界に誘われる。
なんてな事にもなる。
経験談だが。。。

本書は「影響力」と謳っているだけあり、
「深層心理は自分と意図せず利用される事もある」
なんてな現実を突きつけられる。

「おいらは誰の影響も受けないぜいッ!」
なんてな捻た挑戦的な心で読み始めたとしても、そういった自我が強い人ほど何かしら自分に対して気付く事があるのではないかと思う。

こう断言するのは何故か?
かくゆう自分がまさに「ドキリッ!」とさせられたからである。

そもそも自分はプライドが高いと思う。
「私が庶民のお茶汲みやコピーなんて出来なくってよぉ!!!」
と言う格差社会のプライドでは勿論無く、自分自身に対してのプライドと言う意味である。

自分が決めた事には責任を持ちたいので、実現するためのプロセスはしっかり考えた上で決断する。そしてそれを決めた以上は失敗or成功するまで成し遂げる!
勿論、精査した結果自分には夢物語だと判断した事には潔く尻尾を丸めて立ち去る。
それを称して「自己プライド」と言いたい。

社会で生きる上で、何の対価も無く自分のワガママで通ることはほぼない。
「この商品には消費税払うケド、これは払わない!」
「遊びに行きたいからお金出して」
「この家に住むから出て行って!」
なんて傍若無人道がまかり通っていたら、味気の無い人生になるだろう。
自分に都合良く無いルールがあるからこそ打破しようという気持ちにもなれるのだ。

なんて自分の性質をチラミ書きすると、
「はうぅ。。。なんて頑固なレディーさん。。。」
と言われそうだが、ちゃんと人の意見も聞ける大人さんでもある。

誰の意見を聞くかは吟味しているが、何かに挑戦して自分自身のしている事に責任を持っている人の体験談なんてのは大好物だ。
そして必ずしも成功者の意見が正しいとも思わない。
根本的に「合理的に生きたい!」という気持ちがあるから良いとこ捕りに走る傾向にもある。
結局欲張りさんは捨てられないというところが人間らしいと自負。

何故にこんな大真面目なブログを書き散らかしているか?
この本の「影響力」なのだろう。

「マインドコントロール」
心理学を制する者が、良くも悪くも他人の心を操るという行為だと漠然と思っていた。
しかも、他人の一喜一憂に左右される自分に自身の持てない人こそがはまりやすい、なんて認識していたが、自分のように自己責任を強く持とうとする人インに考える性質こそが、最も危険な行動に出るという事に気付いた。

この本は、他人の言動や外見だけではなく「世間体」というものが自己判断に影響する事実があるということに気付かされる。

最初は営業マンの交渉技術やマーケティングの方法として活用できる本かと安易な気持ちで読み始めたが、ビジネスにかかわらず生きていく上で何かしら考えるきっかけになる本では無いかと思う。

社会人1年生から熟年まで、幅広い層にお勧めしたい本である。

ちなみに、この本の次
「影響力の武器 実践編」
影響力の武器 実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣
N.J.ゴールドスタイン S.J.マーティン R.B.チャルディーニ
誠信書房
売り上げランキング: 3669

なんて続本もあるが、本書「影響力の武器」を簡単にまとめた同じ内容なので、同時にお買い上げするのは避けた方が良いかも。
決してお安い値段の本では無いので。

時計館の殺人

綾辻行人さん著者
時計館の殺人 (講談社文庫)
綾辻 行人
講談社
売り上げランキング: 54779


順調にこの館シリーズを読み進めている。

前作の「人形館の殺人」があまりお好みな感じでは無かったので、本作はどうかしら。。。と、少し身構えつつも文庫本616ページの分厚さをサックリと読み終わった。

本シリーズを読んでいる人なら毎度お馴染みの、今は亡き建築家の設計による館で起こる連続殺人。
今回はサブキャラ?というか、今やメインキャラ?とも言える江南孝明氏の勤務する出版社が、雑誌のオカルト特集の取材のために「時計館」に訪れると言うところから悲劇の幕が上がる。

本作でシリーズも5作目と言う事もあり、十分注意して読むようになっている。
毎回、毎回、推理の大まかな部分や犯人は当てる事が出来ても、まさかのどんでん返しまで読めずに煮え湯を飲まされ続けているからである。

館シリーズはほぼ何かしらの影響で密室になるのだが、既に隠し部屋を作る建築家という事を知っている読者としては、不完全な密室という事もあり、全ての登場人物に容疑者の可能性が出てくるし、もはや密室というキーワードすら陳腐に思える。

はずなのだが、著者は魅力的な文章力?と言うのか推理小説としては手の内を見せるという危険を犯しながらも、
「えぇええええっ?!!!そうなのぉ?!!!!」
と、思わせる仕掛けが出てくる。

まぁ、日頃2時間サスペンスの推理に慣れ親しんでる自分の推理が浅いと言う噂もあるが。。。

毎回本シリーズを紹介するにあたり、漠然とした感想しか述べていないのだが、これは是非シリーズを1から順に読んで欲しいという個人的思いからである。
そして、自分と同じ様に何人が煮え湯を飲まされるのか?!
特別奇想天外なラストを迎えるのではないが、やはり毎シリーズ「はうぅうッ。。。」と著者に尻尾を巻いて欲しい。

さて、現在は続く「黒猫館の殺人」は既に読み終わり、本シリーズ初の長編「暗黒館の殺人(1)〜(4)」の(1)を読み始めた。
次回は黒猫の館について書き散らかすが、このシリーズ、10作で完結するなんて話もあるようだが、出来れば末永く続けて欲しいと切に願うばかりである。

人形館の殺人【新装改訂版】

綾辻行人さん著者
人形館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫 あ 52-21)
綾辻 行人
講談社 (2010-08-12)
売り上げランキング: 58341


ココ最近はまっている著者の奇怪な建築家の設計した館で起こる殺人シリーズである。

はっきり言うと、今回は大変読み進みが遅かった。
前作までとは違って、なんだか文学的と言うかハラハラしないと言うか。。。

そもそも主人公が病弱で、ある日自殺した父親の残した館に移住してくる事から始まるのだが、この主人公がなんとも活動的ではない。
まぁ小さい頃から病弱で。。。
なんてな事もあるのだが、常に心の中の自分と語っているというか何と言うか。。。

しかもこの館には、生前父親が作った不完全な人体人形が所々に配置されているのである。
何が不完全かと言うと、1体につき必ず1パーツ不足しているのだ。
しかも顔はのっぺらぼう。
そんな薄気味悪い館なので「人形館」なんて呼ばれるのだが、自分は、この描写のせいで年明けからの悪夢に繋がっていると勝手に思っている。
それだけ今までの作品と違って、人間味の無い異様な雰囲気が本作にはあるのだ。

ストーリーは、過去に起きた事件が関係して主人公が狙われると言う話で、何気に途中から「犯人はもしかしたら」的な予測が立てられた。
しかし毎回、著者には犯人を当てながらもどんでん返しの事実が判明で尻尾を巻かされるので、慎重に読み進める。
例え犯人がこの人でも、今回はどんな裏オチがあるのかと?!!

で、半分までノロノロと1週間以上かけて読み、悪夢に苛まれつつも後半戦になると一気に読み進む!
やはり登場するべき人が登場するとか、何かしらのアクションが無いとなかなか気が乗らないんだよねぇ。

で、結果的に犯人は当たっており、その背景も読んでいたのだが、最後の裏オチがなぁ。。。。
ここで本作の好き嫌いが分かれると思う。
自分的には後味が悪いというか。。。
前作と違う感じの作品に仕上がっている理由もわかるのだが、やはりこういうトリックでは無いケド、実は。。。的な締めは好きじゃないかなぁ。。。

と、まぁ久しぶりに歩みの鈍い読書を堪能したのであった。

たまたま-日常に潜む「偶然」を科学する

レナード・ムロディナウ著者
たまたま―日常に潜む「偶然」を科学する
レナード・ムロディナウ
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 27798


ランダムネスや確率論に関してとても読みやすく書かれた本である。
ただし、全ての結果に関して成功する確立を論じているのではなく、「たまたま」の確立を紹介しているので難しい本ではない。

例えば、ベストセラーや大ヒット映画の成功事例をあげ(「アンネの日記」「ジョングリシャム”判決の時”」「スターウォーズシリーズ」等)、いくつかの名作品が大ヒット前にいくつもの出版社、映画界で駄作だと却下された話などを折込み、どんなに優秀な出版者、映画界でも大ヒット作品を見抜く力は無いと断言している。

また、実際に起こった数学者達の有名な論争
「マリリン・ヴォス・サヴァントのモンティ・ホール問題」
も、当時の様子を交え紹介している。

これは、アメリカの人気ゲーム番組にある選択問題で、
「3つの扉がある。1つには車、残り2つの扉の後ろにはヤギがいる。
競技者が1つの扉を選んだ後、正解を知る司会者が競技者が選ばなかった扉の1つを開ける。そこで「残ったもう一つのドアに選択を変えますか?」と言う。
既に選択した扉からもう1つの扉に変更するのは得策か?」

ざっくり言うとこんな感じの問題で、マリリンは
「選択を変更したほうがよい」
と言う。
それが数学者の確立論で大変な論争になったのだ。
この件について、どちらが正しいのか、どうしてそうなるかが難しい数式等なく簡単かつわかり易く説明されている。

それだけでも一読の価値があると思うのだが、自分を魅了したのはジェロラモ・カルダーノの生涯に関して触れた章である。

ジェロラモ・カルダーノとは、数学者であり、医者であり、賭博師でもある人物。
運命や運を信じ、ギャンブルに天性を見出し荒稼ぎする。そして数奇な運命と天性の力で医者になり『偉大なる術』(la: Ars magna de Rebus Algebraicis) という、三次方程式の根の公式、四次方程式の解法を示した著書を発表している

一部を掻い摘んで書き散らかすと大いなる誤解が生じるので是非、本書一読もしくはWikipedia等で調べて欲しい。

そもそも外国本を翻訳する際、日本で売れやすい書名をつけ、いざ呼んでみたら難しい文献だったりする事がある。
出版業界で流行の語呂合わせなんてのがあるのかも知れないが、読者としては紛らわしいので簡便して欲しいのだが、まぁ、まんまと出版社の思惑に踊らされる自分が悪いのか。

しかしながら、本書は「たまたま」と言う気楽な感じの書名が特に逸脱していない。
これが「確率論は全て運命だ!」なんてな書名だったら手に取る客層が違っていただろう。

ここに紹介したのは一部で、「錯覚」「認識パターン」「期待」等、まだまだ読み応えのある話が沢山ある。

確立に限らず、人生全ての事柄を
「運命だ!」
と言ってしまうよりも、理屈でもつけて自分を納得させたい人にお勧めの作品である。

貧困ビジネス

門倉貴文さん著者
貧困ビジネス (幻冬舎新書)
門倉 貴史
幻冬舎
売り上げランキング: 67988


既に社会問題としてお馴染みの貧困者を狙ったビジネスに関して、詳細や状況を紹介している本である。

テレビでも報道される
「敷金ゼロ物件」「臓器提供」「振り込め詐欺」
といった聞き覚えのある問題から、
「養子縁組のリセット屋」「募金詐欺」
など初耳に近いビジネスに触れる。

また、子供の手足を切断にして物乞い。。。
なんて驚愕な世界事情も紹介されている。

発展途上国へ海外旅行に行くと、観光名所のすぐ側に物乞いの子供達がいたりする。
自分もバリ島へ仕事で滞在した際、信号で止まった車にどこからともなくワラワラと子供が寄ってきて窓を叩き物乞いをされた事がある。
現地在住の方々は物乞いに手助けはしないようにと言う。
それが彼らにとって生活の糧になるのか、自立を阻むことになっているのかはわからないが、本書で語られる人為的に哀れみを装い物乞いする事はとても危険なことだ。
もしもそれで生活が成り立ってしまったら、未来を担う子供達が大人の欲望の犠牲になってしまう。

本書は、悪い部分だけをさらして書かれているのでもなく、光の部分として「寄付ビジネス」「ビッグイシュー」についても紹介している。
国が違えば税法も変わるが、アメリカで寄付が当然の事として行われるのには課税対象外という素敵な事があるからだったりもする。
だったら日本も!
と、安易に考えるのは危険だが、世界を見て良いものは進んで取り入れていくというのも悪くは無いだろう。

メディアで流れる情報だけが真実とはせず、たまには色々と本を読み漁るのも楽しいものである。

バーナード・マドフ事件 アメリカ巨大金融詐欺の全容

アダム・レボーさん著者 副島隆彦さん監訳・解説
バーナード・マドフ事件 アメリカ巨大金融詐欺の全容
アダム・レボー
成甲書房
売り上げランキング: 55488


本書は、2008年12月10日、実際に起こった世界的詐欺事件である。
リーマンショックも冷めやらぬ同年に起こったこの事件は、世界の投資家に大激震を起こし、これにより億万長者から一挙に破産に追いやられた資産家も少なくない。

そもそもバーナード・マドフとは、ナスダック市場の創設者である。
つまり証券取引業を営んでいた彼がナスダック市場を創設し、一躍花形に踊り出たところ自分の手に負えないところまで投資事業が一人歩きしてしまった結果故の詐欺事件となった。

大まかに言うと投資の世界的ねずみ講なのだが、その規模が大きすぎて読んでいるこちらまでハラハラする。
本書に「投資家被害総額一覧」やねずみ講の簡単な図式があるので参照すると、巨匠スピルバーグ監督や俳優ケビンベーコン、マルコヴィッチ、日本企業では野村ホールディングス、住友生命、あおぞら銀行、その他政界中の有名な銀行、投資会社、生命保険などがいる。
スピルバーグ監督を初め多くの個人・団体は被害金額非公開だったりもする。

この事件の最初の被害者から、どういう手法で、どういった経過で、採取的に、と続いていくのだが、ハードカバーにしては文字も大きめで文章が読みやすいためサクサクと読み進めた。

経済事件に関する本は「エンロン事件」で読み漁って以来だが、結果
「騙された方が悪い」
と言うにはあまりにも重過ぎる。
お金を増やすという事は、自己の裕福や贅沢を求めるだけではなく、慈善事業への資金調達手段であったりする場合もあるのだ。

なかなか読み応えのある本書は経済事件や経済小説が好きな方にはお勧めである。

残念な人の仕事の習慣

山崎将志さん著者
残念な人の仕事の習慣 (アスコムBOOKS)
山崎将志
アスコム
売り上げランキング: 1526


この手の本は、自分の日常や考え方を見直すエッセンスとしてとても役に立つ。
「こうするべき!」
「こうしなさい!」
と書いている訳ではないので、例えが正しいかはわからないが性格分析や占い本と似ているような気がする。

現実で起こる不都合やお得だと感じているものを、
「何のために」「何故?」
と疑問を定義していく事により、頭の中で整理されていく。

そもそも自分は物事に対して考えすぎるところがあるので、「何故?」「どうして?」と思うのは得意だ。
いやむしろ常日頃そう思って生きている。
時に考えすぎて無駄骨なんてこともあるが。

自分の仕事のやり方だけではなく、残念な上司、残念なショップ店員といったような日常生活で遭遇する事柄についても説明されているので、客観的思考を巡らせながら一読するのも良いのではないだろうか。

ちなみにこの残念な習慣。
自分もかなり当てはまる。。。
来年はもう少し意識してお得な人にならなければ!!!

迷路館の殺人【新装改訂版】

綾辻行人さん著者
迷路館の殺人<新装改訂版> (講談社文庫)
綾辻 行人
講談社
売り上げランキング: 97208


館シリーズの第三巻である。
そもそも館シリーズとは、奇妙な設計をする故建築家の中村青司氏が生前に作った館で起こる殺人事件である。

毎回居住するには難儀な設計の館で起こる事件は謎が多い。
これに関しては、通常ではありえない状況設定が出来るので色んな可能性の推理が出来るので楽しい。

さて今回は迷路館という事もあり、館そのものが迷路となっている。
しかも各室ギリシャ神話の登場人物名がついている所も面白い。
自分はそんなにギリシャ神話に詳しくないが、その名前の神様についての話は作中で説明しているのでわかる。

この館の主はミステリー小説の作家大先生だが、ここ数年執筆活動を辞めているところから物語は始まる。

作家大先生の誕生日という年に一度のイベントに、後継者選びとは言わないまでもその莫大な遺産分与を餌に目にかけている小説家4名、編集者、評論家、ミステリーマニア(シリーズ通して登場する人物)を集め、館を題材にしたミステリー小説の大コンペティションを始める。

条件は、期間中館から一歩も外出してはいけないという密室空間。
そもそもこの館が地下に作られているため完全に隔離された状況である。
その中で次々と起こる連続殺人。

今回は、手の込んだトリックは無く薄々犯行手口というのは推理できた。
しかしやはり今回も犯人の目星は間違っていなかったものの騙された。
何故だ?!
まだ3作品しか読んでいないせいだからか?!
どんでん返しがあるとわかっていながらその他の事に注意を持っていかれ、最終的に「はうッ!!!またやられた!!」
となってしまう。

そもそもトラップが多い。
本作品では、”犯人は誰か?””この事件を小説として書き上げたのは誰か?””動機はなんだ?”と、解かなければならない謎が多い。
ちなみに”小説として書き上げた。。。”と言うのは、本書がこの事件の目撃者による書き下ろし初出版本であるという設定から始まるため、誰が書いた本かも推理しなければならない。

最後のどんでん返しにも見事に絡まり、あげく小説家すら当てる事が出来なかった。
今のところ自分は著者に0勝3敗。
現在あと6冊の館シリーズが残っている。
続いての「人形館の殺人」を手に打倒を誓うのであった!!!!

久しぶりだなぁ。。。
こんなにバシバシ読み漁る作家さんも。
アガサクリスティー以来かしら。

 しまった!「失敗の心理」を科学する

ジョゼフ・T・ハリナン著者
しまった! 「失敗の心理」を科学する
ジョゼフ・T・ハリナン
講談社
売り上げランキング: 21320


目の錯覚や思い違い、そんな事は実は日常茶飯事に起こっている。
良く自分も思いこみで行動する事により勝手に傷ついていたりする。
後悔もそうだが、後々に「ありゃ?!」なんて気付く。

ここ数年、脳の判断力は実は曖昧だという事実も一般的に認知されてきており、人間が完璧であろうとする事は実に困難だとわかった。

そういう難しい事が本書に書いているのでは無いが、経験からの判断ミスや無意識に起こす間違った行動等を、コラム的な短い文章で解説しており大変読みやすい。

・「最初の答え」にこだわるな
・「決断」は以外と底が浅い
・太った人を食い物に
・バフェット最大の過ち

上記は沢山あるお題のほんの一部であり、そのお題で2〜3ページ書かれているのだが、
「あぁ、なんか分かる気が。。。」
と、自分にも思い当たる節がいくつか出てくる。

トリックアートやマジックを見て「おぉ!」と騙されるように、人にとって思い込みは切っても切れないものってとこだろうか。

良くも悪くも失敗は誰しもが起こす事で、どんなに慎重に生きていても必ずどこかで失敗しているだろう。

本書のように「ありゃ、失敗!」と思える程度で済む事であれば笑って済ませるが、人を巻き込み、自分の首を絞めるような失敗だけは避けたいものだ。

心理学的なものに少しでも興味があれば、ちょっとした息抜きにお勧めの一冊である。

水車館の殺人【新装改訂版】

綾辻行人さん著者

水車館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)
綾辻 行人
講談社
売り上げランキング: 138050

館シリーズの第2作である。

第1作「十角館」の続きもので、同作品に登場した十角館を設計した建築家が設計した水車館での殺人が今回のお話。
この著者の作品はまだ2作目なので、こういう手法が定番なのかはわからないが、
本編に入る前にプロローグが描かれる。
そしてこのプロローグは、読み終わった後に「あ、そういえばあれって。。。」てな感じで読み返す事になる。
特にヒント的な事を描いているわけでもないが、読み返してみると妙に人物像がリアルにイメージでき、また違った感じで読める。

さて、本作は、水車館で年に1度しか公開されない絵のコレクションのお披露目会で事件が起こる。
正しくは1年前に事件が起こった。

本作は過去、現在、現在、過去、と時系列で章が進むのだが、同じ日の同じ行事、同じ顔ぶれで事が進むため混乱もなくすんなりと頭に入る。
それどころか、先が気になって途中で手を止める事が出来ない。

要所、要所で推理脳を働かせる箇所がある。
読み進めながらも容疑者を絞り込み大方の推理を完成させる。
クライマックスへ向うと共にその推理パズルが一つ一つはまっていく。

思うに、多分そう捻くれた難しい推理ではない。
ただ、前作もそうだが、犯人を当てる事は出来ても更にその裏にある驚くべき真実までは推理出来ていない。
これが今自分を魅了している。

そもそも犯人に目星がついたら、次にするのは犯行の裏づけ、そして動機。
2時間サスペンスならそこでエンディング。
しかし本作品はもう一スパイスが加わる。
もしそのスパイスが無くてもすっきりと事件は終わるのだろうが、それを加えることにより更なる深みが味わえ、そして最初のプロローグに戻るのだろう。

ミステリー物は、1度目と2度目では目線が変わる。
勿論、犯人を知ってから読むのだから無意識に一つ一つの行動に意味が出てくる。
今までに何度も読み返したミステリーは「そして誰もいなくなった」しかないが、この著者の作品もいつか読み返したくなる作品なのかも知れない。

ただ、今はシリーズの続きが読みたいのでひたすら買い漁る日々。
ちなみに、本作も面白くて一夜にして読破した。
進む本ってあるんだよなぁ。

十角館の殺人【新装改訂版】

綾辻行人さん著者
十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)
綾辻 行人
講談社
売り上げランキング: 4416


誰に推薦されたわけでもないが、プラプラと本屋さんを徘徊すると出会った1冊。
「ミステリ史上に残る大トリック!」
と言う帯に釣られたというのもあるが、本書は1987年に刊行された著者のデビュー作である。

以前にも書き散らかしたが、自分は日本人作家の小説はあまり読まない。
と言っても経済小説なんてのは好きな作家が数名いるので読破するが。

さて、本書。
出だしから登場人物達がニックネームで呼び合う。
その予備知識が無いままに読み進めたものだから、最初は日本人が外人の名前で呼び合うシュチュエーションに嫌悪感すら覚えた。
しかし、その後に無知な自分を恥じることになる。

このニックネームは海外推理作家の名前からきており、自分もまだ知らない有名作家だったからだ。
しかも自分が知らないだけであって、推理物が好きな読者には知ってて当然な作家達。

さて、ストーリーは大学のミステリーサークルの仲間達が興味本位で不可解な殺人事件が起こった孤島へと向うところから始まる。
その孤島には「十角館」と呼ばれる十角形の館があり、近くに「青屋敷跡」と呼ばれる殺人現場がある。

殺人事件は1年前。
その持ち主であり各館の設計士でもある有名建築家とその婦人、使用人夫妻の謎の殺人事件。行方不明の庭師。

孤島、奇妙な館、謎の殺人事件、行方不明者、それだけで十分推理心を擽られる。
そしてミステリーファンにこれみよがしにアガサクリスティー「そしてだれもいなくなった」をなぞらう。

「そしてだれもいなくなった」と言えばつい最近読んだ「インシテミル」もそうだが、本作品の使い方の方が安心して読める。
インシテミルの施設も不思議な構造になっていたが、本作品へのオマージュなのだろうか。

さて、本作品が刊行された当時は、ミステリーと言えば社会派的なものが多かったらしく、今でこそ多用されるトリックや手法などは斬新な切り口として賞賛されたようである。
そして著者が残した爪跡は偉大なものであると絶賛されている。

かくして自分も著者の作品に魅了された一人である。
良いミステリー小説は、時代が変わってもやはり色あせずに面白いのだろう。
あまりに面白くて本書は一気に読み、ついで「館シリーズ」とされる本作品の続編を2冊お買い上げし、既に昨日1冊読み終わった。

続編に関してはまたの機会に書き散らかすが、洋風なミステリーが好きな読者は是非本書を手にとり、一緒に推理して欲しい。
連続殺人の手法は斬新でも凝った仕掛けがある訳でもないが、素人殺人であるからこその不完全さ、そして納得のいく動機、薄々犯人だろうと予想していた人物の最後の仕掛け、どこをとってもやはり面白い!につきる。

読み終わってから一つの疑問が残った。
慌ててネット検索をかけてその疑問を解決する。
「あぁ、そういう事か。」
今またページを読み返し納得する。

得てして、ミステリー小説を読みなれていると見落としがちな事が多い。
新作よりも旧作の作品こそ「知ったかぶり」で読むと騙されるのである。

著者はこの「館」シリーズを10作品書くと言い放っている。
しかもシリーズは、名探偵ではなく、奇妙な設計ばかりをする建築家が設計した館で次々と起こる殺人事件のようだ。
「こんな設定があったのか?!」
小説なんか1行も書かない素人な自分も、目から鱗の著者発見!の嬉しい悲鳴の秋であった。

THE CATCHER IN THE RYE

J.D.SALINGER著者
THE CATCHER IN THE RYE

かの有名な「ライ麦畑でつかまえて」の原文である。
ずっと昔からお勧め本として紹介されていたのだが、原文で読むか日本語版で読むか悩んだあげく、悩んでいたことを忘れすっかり月日が流れた。

しかし最近、ふと友人と文学の話になり原文を持っていると言うことで借りて読んでみた。

書名はお馴染みだったものの内容は全く知らず、読み終わった人に聞いても
「読んでみればわかる」
の一点張りなため何の予備知識も無く読み始める。
どうせなら!
と、家では声に出して読んでみる事にする。

「IF YOU REALLY want to hear about it,...」
主人公の少年の背景を本人の語り部調に始まる。
紅茶を飲みながら優雅に音読。

のはずだったのだが、読み始めてすぐ意気揚々と声高に読んでいた声が小さくくぐもる。
何やら家庭で言おうものなら母親に叱り飛ばされそうな言葉が続く。
ま、まぁ主人公は思春期真っ只中の年頃だし、プレップスクール(名門校に入るための新学校)を追い出され続けてもいるし。。。

ひたすら会話口調が続くとも知らず、とりあえず禁句は声をくぐもらせながらも音読を続ける。

物語は、主人公ホールデン少年がクリスマス休日目前に、またしてもの退学通告を出された日からの3日間が描かれる。
学生寮にいる仲間達は、その行動と共に屈折した形容詞で表現され、しかもその表現が絶妙だったりもする。
誰しも思春期には、他人や見ること起こること全てにこういう目で見ていた時期があるのではないだろうか。

当初、色んな登場人物による物語の展開があると想像した期待は裏切られ、ひたすら独白が続く。
しかもページが進むにつれ言葉使いはスラングが強くなる。

途中、友人から「本読み終わった?」なんてお気楽な問い合わせが入り、ちょっぴり疑問に思っていたことを口にする。
「。。。あのぉ。。。これって。。。文学小説なんだよね?」
「うん」
「。。。なんだかぁ。。。言葉がぁ。。。汚いんですケドぉ。。。」
「あぁ、南部だしスラング多いよ」
サラリと言ってのける友人。

ぬ?ぬぬぬ?
この本は、太宰治について熱く語っていた君が「お勧め!」として自分に貸した本では?
その流れからして無意識に美しい文学を期待していた自分がいたかも知れない。
まぁ太宰治が美しい文学かと問われても微妙だが。
それは勝手な思い込みとして、むむぅ。。
「これって、良い本なんだよね?」
更に喰らいつく自分。
「まぁ、読んでみなさいって」

再び音読に戻る。
ふふ〜む。。。
こんだけスラング、訛りオンパレードの主人公とは、
「実は病気か何かで空想の世界に生きていた!」
てなオチかい?
「もしくはこの勢いで犯罪を犯し独房の中で手記でも書いた!」
とか?
とりあえず夢を膨らませつつ進める。

主人公、学校を飛び出し家路に向う。
ニューヨークの町を有金を集め彷徨う。
行き交う人々を心の中で凄まじく皮肉り、時には自分を正当化。

確かに、自分にも大人社会を「くだらない」なんて冷めた目で見つめる子供時代はあった。
主人公の考え方もまぁわかる。

結局、最後まで読み進めた。
期待した夢オチも、実は独房者説もなく終わりをむかえる。

「えっとぉ。。。これは何?」
普通に出てきた感想を友人にぶつける。
「ん?何もないよ?」
涼しい顔の友人。
「へ?これは精神の葛藤とか最後のどんでん返しとかってのは無いの?」
「ん?ないよ?」
「ぬぬぬ?な、何故に文学作品だと?何故にこんなに有名な作品に?!!」

早速ネット検索。
そして納得。
やはり、言葉が重要ポイントなのだ。
その当時の時代背景が浮き彫りにされ、当時の若者が使っていた言葉をそのままに、そして少年から大人に成長する前の世の中の葛藤や屈折を表現している。
それこそ文学と呼ばれるものなのだ!!

なんて調査した事をすっかり熱く鵜呑みにしてみたが、本作品、
いまだに「禁書リスト」に名を連ねているらしい。
ありゃ。

しかし、本作品の日本語訳って難しいだろうなぁ。
日本語に適する表現が無いような。

英語はあんまりぃ。。。
ってな人も是非一度原文に目を通すことをお勧めする!
きき慣れたスラングが端々に散りばめられていて数えるだけでも本書の雰囲気が垣間見れるのではと思われる。

ちなみに、読書中は友人との間でガッデムスラングが大ブレイクしていた。

激安なのに丸儲けできる価格のカラクリ

坂口孝則さん著者


「この店とこの店では、どちらが儲かっているか?」
なんて、皆が知っている有名店を比較し、ビジネスモデルを解説する本は近年沢山発刊されている。
自分も有名店の名前に釣られて「どれどれ」なんて読み漁った時期もある。
しかし、結局数字を並びたてグラフ図をつけただけの物も多く、「原価率」「変動費」なんて言葉だけで毛嫌いする輩にはちっとも面白い本ではなかったように思う。

自分は、「原価率」「利益率」なんてものに予め目を光らせていたから興味深く読んだ方だが、それでも心に残るような解説は無かった。
それから暫く「○○と○○ではどちらがどうだ」的な本には見向きもしなくなった。

たまに気になったとしても、背表紙の解説なんかを読んで買わずに帰っていたのだが、この本の帯に「ポイント制の真実」なんて書いてあったのを目敏く見つけ思わず手に取った。

ここ数年、国際会計基準に合わせるべく日本の会計基準に大革命が起ころうとしている。
そんな会計基準のひとつに
「ポイント発行に相当する金額を売上額から除外して負債に計上することになる」
なんてな文言があり、ポイントを乱発してる企業さんの決算書は面白い事になるだろうなぁ。。。なんて思っていたので、「ポイント制」の言葉に心が躍った。

本の内容は、マック、ディズニー、JALのビジネスモデルの儲けの仕組みについて綴ってあるのだが、各章別にわかりやすく説明されているので、利益率といった数字が苦手な人にとってもその部分を読み飛ばしても面白い内容だと思う。

で、一番興味のあった「ポイント制」。
「現金値引きとポイント還元のどちらが得をするか?」
のカラクリが書かれている。
この2種類のサービスを例えて考えるなら
「cm(センチ)」と「インチ」のような事だろうか。
センチは想像出来るケド、インチだと。。。
数字を当てはめると分かるケド、そこまでせずに終わるという感じ。
この答えは是非本書を手に取って見て欲しい。
自分にとって、一番役に立った章でもあるので。

結局、資本主義社会において商売とは心理戦なのだが、儲かっている人がいればその分支払っている人がいて、支払っている人が多いか少ないかがビジネスモデルの違いであって、支払った人がその後幸せかどうかはその人次第。

人が満足し続ける事なんてないからなぁ。。。
常に無いものねだりであるからこそ人間社会が進歩しているんだし。

本は本として納得して読めばいいが、この教訓を実生活に持ち込むとさぞ輝きを無くした生活になるだろう。
いつの時代も物事の裏側とはそんなもんだ。

書物狩人

赤城 毅さん著者
書物狩人 (講談社文庫)
赤城 毅
講談社
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ある時は「ル・シャスール(書物狩人)」と名乗る主人公が、あらゆる手段で依頼主の求める本を手に入れるという話。

本書は、4話からなる主人公の本入手大作戦&その本の貴重価値について書かれている。
主人公が、国内外問わず依頼された本を探す中で陥る危険な状況は読んでいてハラハラするべきところなのかも知れないが、主人公自身が冷静かつスマートであるがためにいまいち感情移入が出来ない。
いや、主人公に感情移入するからこそ読み手の自分も無機質になるのだろうか。

自分が最初に本にまつわる小説を読んだのがジョン・ダニングの「死の蔵書」だったので、どうしても本を探すだけではなく、何かしらの事件を解決するミステリー展開を求めてしまう。
そこに当てはめようとして衝動買いするから「最高、面白かった!」と言えなくなっているのだろう。

本書も、1冊の本にまつわる色々な出来事があり本好きが目を通すのも良いだろうが、ミステリー好きには、どちらかと言うとハードボイルドな雰囲気にやや心を削がれるやも知れない。

追跡する数学者

デイヴィッド・ベイジョー著者
追跡する数学者 (新潮文庫)
デイヴィッド ベイジョー
新潮社
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数学者である主人公が、失踪した元恋人から遺贈された蔵書を解析し、彼女を探索に行くと言うストーリー。

何気に本屋さんをぶらぶらしていて、背表紙に書かれた上記のような内容に釣られて衝動買いした本作品。
うほッ?!数学が絡まった失踪事件を謎解くミステリーだな!!!
なんて勝手に舞い上がって残念な羽目に陥った。

自分は、どうやら「蔵書」「数学者」というキーワードに弱いらしい。
いざ読み進めていくと、どうも想像していたような蔵書や稀覯本の類の話よりも桃色の大人の時間的な描写が多い。
かと言って官能小説でも無いようなのだが。。。
まぁ官能小説を読んだ事が無いのでわからないが。

辛抱強く稀覯本やミステリー部分を待っていたのだが、一向に現れる気配はなく、首を傾げながらも背表紙を改めてみると
「書誌学と数学を大胆に駆使し、濃密なエロティシズムで包みこんだペダンティックな改作」
と続いていた。

なんだよぉ?!「ペダンティック」ってぇ?!!!!
という心の叫びはともかく、「濃密なエロティシズム」とある。
はうぅッ。。。。納得ぅ。。。

どうも、「ミステリー展開ならこの次に殺人が?!」と思うような所で主人公はすぐに女性と営みはじめると思った。
なるほどぉ。。。

すっかり心を挫かれたので飛ばし読みを試みるも、興味を失ってしまった小説は頭に入る事もなく、久しぶりに途中挫折した。

。。。こればっかりはしょうがないよ。
他に読まれようとしている本が溜まっているんだもの。
そう自分に言い聞かせて本を閉じた。

結局、元恋人は見つかったのかしら。。。。

インシテミル

米澤穂信さん著者
インシテミル (文春文庫)
米澤 穂信
文藝春秋
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今上映中、藤原竜也さんが出演している同名映画の原作である。

普段、自分は原作本などは読まないのだが、ぼんやりとした映画の粗筋を見て何となく興味を持っていた。

時給11万2千円の求人に、様々な理由で募集した12人の男女。
詳細不明のまま採用されたアルバイト先の密室で起こる連続殺人事件。
そもそもアルバイトの詳細こそが報酬を巡るサバイバル実験だったのだ!

ミステリー好きがここまで聞くと即座にアガサクリスティー著作「そして誰もいなくなった
」を想像するだろう。
そして殺人による無差別殺人サバイバル!となると、高見広春さん著作「バトルロワイヤル
」すら浮かんでくるやも。

実際、解説にも「バトルロワイヤル」の話も出てくるのだが、この解説にて「バトルロワイヤル」がスティーブンキング改めリチャード・バックマン著作「死のロングウォーク
」をオマージュしているとは初めて知った。
自分は、全く別のタイミングで「死のロングウォーク」を読んで驚愕していたのだが、まさか「バトルロワイヤル」と繋がろうとは。。。
言われてみると「ふ〜む。。。」と思うが、似て非なり。

脱線したが、そもそもの時給11万2千円という半端な数字設定に何かしらの意味があるんだろうなぁとは思っていた。
最近、数学者の本や小説を読んでいたので敏感になっている事もあるが。

しかし、本作においては結構無理矢理な展開に持っていくなぁなんて感じた。
相変わらずネタばれに近い感想を書く予定はないので確信に触れないが、
参加者達の背景が描かれていないので誰にも感情移入が出来ないのと、主人公の結城という青年の中盤以降の性格が微妙に違和感を覚えた。
何だか無理矢理読者に説明する存在になってしまったような。。。

密室の連続殺人、しかも凶器はミステリーファンにはたまらない日常有り得ない物、なんてな事になると数多くの旧作と比較されざるを得ないのだが、本作品ではミステリー読みが期待してしまうアイテムを出しながらも、何の演出にもならなかったのは残念に思う。
そういったオマージュ部分はミステリー初心者には優しくないだろう。
意味深に登場したアイテムが結局意味がないのだから。

こう書くと批評に聞こえがちだが、犯人探しに目一杯推理して先を先を読み進め、ちょっとした頭休めにお買い上げした小説だったのに、2日で一気に読み上げてしまったので文章に魅了されていたのだと思う。
設定が面白かっただけに、動機とクライマックスをもう少し楽しませて欲しかったというところだろうか。
。。。本も書けないくせに生意気発言!てへッ。

こういう作風なら前に読んだ、北山猛邦さん著作「アリス・ミラー城殺人事件
」の方が好きだなぁ。。。

読書の秋も深まるばかり。
たまにはミステリーナイトの夜長をお過ごしあれ!

ランスバーグ先生の型破りな知恵

スティーヴン・ランスバーグさん著者

ランズバーグ先生の型破りな知恵
スティーブン・E・ランズバーグ
バジリコ
売り上げランキング: 249668
おすすめ度の平均: 4.0
4 主張に全面的に賛成する
4 ランズバーグさん本気や!
4 守銭奴はいちばんの慈善家だ


著者は大学の経済学部教授である。
何年か前に「ランチタイムの経済学」を読み共感した覚えがあったので、たまたまネットで「新刊が出た!」という情報を目にしたのでこの本の取得に走った。

が、行く書店行く書店に在庫は無く、かといって飛ぶように売れてる
「入荷待ち」でもなく単純に取り扱い書店が少なかった。

により、この本を手にするのに約1ヶ月かかってたりする。
そもそも、確実にあるだろうなと思っていた書店に行く機会が無かったので、近場や出先近辺の書店に足を運んだのだが、結局最後は予想通りの書店にヤツはたたずんでいた。

さて、そんな苦労して手に入れた本書。
生活の中にある疑問を経済学的に考えて論じているのだが、
と言って難しい本でもなく、かなり強引であるけれども何かしらの結論に導いてくれるさっぱりとした本である。

初っ端から
「不特定多数の女性と夜を過ごすA君と、奥手でお気に入りの女の子も誘えないB君がいるとして、奥手のB君が羽目を外さない事によるエイズや性病の発症の確立」
なんてのを淡々と一歩距離を置いた視点から語る著者。

これに限らず、「あ、なるほどね」なんて面白い視点から考えた結論に納得してしまう。
生命の誕生や人の死ですらマクロ経済学的に冷静に語られる本書を、
「屁理屈」と捉える人もいるかも知れないが、経済学とは往々にして屁理屈じみている。
しかし自分は「論じるとはこういう事なんだろうな」と関心した。

やはり相変わらず著者の作品は読みやすい。
自分が想像する著者は歪んだ偏屈王な感じだが、発言には何かしらの愛嬌を感じるので嫌味と取れずに読める。

「何でだろう?」
なんて日頃よく口にする人にはお勧めの1冊である。

THE PREY ザ・プレイ

アリスン・ブレナン著者

ザ・プレイ (集英社文庫)
アリスン・ブレナン
集英社
売り上げランキング: 311425
おすすめ度の平均: 2.5
4 クライマックスが少し長い
2 消化不良
2 訳者の責任かも・・・
2 がっかりです
2 しょせんは素人?


母親が読んでいた海外作家の小説。
久しく海外作家の小説を読んでいなかったので懐かしい感じで読み進める。

内容は、主人公の元FBI捜査官である人気女性作家の小説を真似て周辺で起こる連続殺人。それにより本当の狙いは主人公である事が判明し、誰が何のために彼女を追い詰めるのか?!
と言った犯人探し、魅力的な主人公を取り巻く恋愛ロマンス、FBIや刑事のハードボイルドなアクションシーン等が描かれているサスペンスアクション小説。

海外作家と日本作家の違いで一番感じるのは、海外作家のドライさだと思う。
感情移入した登場人物が虚しい死を遂げるのは日常茶飯事だし、クライマックスに向けての展開が猛スピードで進む。

原文ではなく、翻訳で読んでいるので大抵の海外小説が同じような起承転結傾向にあるのかも知れないが、その辺が一気に集中読破させる。
物事の描写も生活習慣の違いから何の抵抗もなく読めると言う事もあるだろう。
日本小説だとどうしても「ぬ?そんな行動取るかい?」なんてな突っ込みで引いてしまうのだ。

で本作。
う〜ん。。。結構、ハードな内容。
銃社会アメリカでは有りそうな無さそうな事件だが、正義って。。。とチョッピリ心が重くなるシーンが多数。
結局何だかなぁと言う結末ではあったが、久しぶりのハードボイルドな雰囲気に、ウイスキーストレートを流し込み、短くなったタバコを揉消す、そんな妄想が浮かんでは消えるのであった。

ローマの休日とユーロの謎

宿輪純一さん著者

ローマの休日とユーロの謎―シネマ経済学入門
宿輪 純一
東洋経済新報社
売り上げランキング: 217844


シネマ経済学入門と銘打っているので釣られ買いをした。
。。。。しかしぃ。。。期待と違った内容にちょっぴり残念。

著者もまえがきにて
「映画評論を書いていたが全くうけず経済と組み合わせたところエッセイ的な雑誌で評価されるようになった」的な発言を書かれている。
(大分、自分なりの解釈で抜粋しているので著者の思いと違うかも。。。)

つまりは、個人的に期待した映画の内容やプロモーションによる人間の行動経済学や統計学的な書物ではなく、映画の雑学的要素が多いように思う。
勿論その映画から見る経済的エッセンスもあるにはあるのだが。。。

「レオン」「ニューシネマパラダイス」「「ティファニーで朝食を」等の名作から、「シッコ」「不都合な真実」等の社会的な映画、その他全84作品の映画を題材に書かれているが、やはり簡単な読み物として書かれているせいで題材が勿体無い気がした。
自分が言うのも何だが、コンセプトが面白い分テーマに合わせた映画を数本比較対照で紹介して尚且つ経済学をもう少し絡めると面白いのにぃ。。。
なんて生意気に思ってしまった。

映画が好きで経済学的な考えを面白いと思う人には旅のお供に読んでもいいかも。

「アリス・ミラー城」殺人事件

北山猛邦さん著者

『アリス・ミラー城』殺人事件 (講談社文庫)
北山 猛邦
講談社
売り上げランキング: 103432
おすすめ度の平均: 4.5
5 「物理の北山」が『そして誰もいなくなった』に挑戦
4 2回読む楽しみ
5 隠れた名作
4 こんな…


久しぶり、久しぶりの日本人作家のミステリー小説である。
基本的に自分は日本人作家の小説は企業小説やビジネス関連の物しか読まないのだが、この本には本当にたまたま出あった。

すっかりアリスブームにはまっていた自分は、ビジネス書籍ばかりの生活が続いていた事もありちょっとしたエッセイや小説でも読もうかと本屋さんで片っ端から本棚を漁っていた。
そんな矢先本書の背表紙に目を留める。

「アリス・ミラー城」。。。

手にとった表紙はまさに不思議の国のアリス・鏡の国のアリスを絡めたような絵柄。
早速裏に書かれている概要を読むと正しく「アリス!」をモチーフにした内容と言う事でお買い上げ。
昔CDをよくジャケ買いしてた頃を感慨深く思いつつ全く知らない作家の小説を手にした。

内容は、アリス・ミラー城に招待された探偵たちが次々と殺害されていく連続殺人。しかもアガサクリスティー著作「そしてだれもいなくなった」を作中に挟みいれ、そしてそれが読者を惑わす仕上げとなっている。
アガサクリスティーだけではなく、ミステリー読者にはお馴染みの作家や手法等を探偵の会話に交え心憎い演出なのか、「俺もミステリーを読んできたぜ!」を主張したいのかしら?なんてな意地悪な読み方まで出来てしまう本作。

感想は、まず1読して「へ?」と拍子抜け。
正直、
「いや、無いでしょ!そのオチは!!!散々アガサクリスティーや有名作品、コアっぽい作品をひけらかしておいて!!」
と、思った。

が、数日後、納得のいかない自分はネットサーフィンでこれが大きな勘違いだという真相を知る事になる。

そう、まんまと騙されたのだ!
この「テレビサスペンス視聴の女王」の名を欲しいままにした自分が作家のトラップに見事にはまり、挙句このままだと「駄作」のレッテルをはるところだった。

この後、作家である北山さんが「物理の北山」としてミステリー界で名を馳せている人だと知る。

ただ、やはり日本人作家のミステリー小説を読みなれていないせいか、どうも文章が子供っぽいと感じてしまう。
個人的な好みの問題なのだが、山田 悠介さん著作「リアル鬼ごっこ」を読んだ時も設定は面白いのに文章になると「う〜む。。。」と思ってしまう。
名前が日本人なのに設定が洋風だったりするせいなのかなぁ。。。

ちなみに先日、母親から読み終わった小説を借りた。
そもそも小さい頃から海外作家の小説しか読んで来なかったのは母が海外物しか読まなかった影響でもある。
なので「何故日本小説を読まないか?」と聞いてみると、
「日本の小説で名前が日本人だと身近な知人を想像しちゃって読み進められない」
との返事。
ナルほどねぇ。。。
想像豊かと言うべきなのか想像力不足と言うべきなのか。

今回の作品をきっかけに著者の「城」シリーズを一通り読破した。
それを読む限り、あんまり周りにいそうにない名前を使用してるなぁ、なんて思ってみたり。
この作品は、犯人が分からなくて読みたい気持ちが逸り電車の中で読もうくらいに思っていたが帰宅早々引篭もりがちに読み終わった。
そこそこミステリーを読んでる人にも是非一読お勧めである。

他作品の紹介については随時アップ予定!。。。は未定。

排出権商人

黒木亮さん著者

排出権商人
排出権商人
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黒木 亮
講談社
売り上げランキング: 2208
おすすめ度の平均: 4.5
5 よいけど限界あり
5 アクの強い人物たちと現場が排出権相場を盛り上げる。
5 排出権取引の仕組みがよくわかります
4 CDMの欺瞞を突く
3 CO2削減問題、まずはこの一冊から。


好きな作家さんの一人である著者。
銀行、証券会社、商社を経て作家になられているという事で、取引実務に関しての詳細や情景がサックリと描かれる中にもリアリティーが感じられる。

本書の内容は、今後日本に重くのしかかるであろう魔の京都議定書におけるCO2削減のための排出権取引にまつわる、
「どのように排出権を生み出し」
「どのように売買換算するか」
「どういった議会で認証される」
といった、よくある「排出権取引とはこういうものです」的な説明本には難しく書かれがちな内容を、小説を通してわかりやすく表現されている。

何事もそうだと思うのだが、物事を擬人化し、ストーリーだてて表現する事により、各人でイメージを作っていくので、難しく思いがちな事も理解しやすくなる。
そういった意味で、実社会の事柄を小説という社会の中で、架空の人物に体験させ読み手を魅了していくというのは、コア過ぎても一般うけしないし、かといって周知の事実だけを並べたてられても「で?」と言う感情しか残らないので本当に難しいと思う。
実情を小説化するのは、情報の多寡に十分注意しつつ登場人物にリアリティーをつけ、さらに登場人物に感情移入できる物こそ面白いのだ。

そういった事を本書はクリアし、読みやすく、そして引き込まれるように一気に読んでしまった。
主人公である女性の地球環境部の室長が、案件探し、現場調査、資金調達を、主にアジアを中心にビジネスを形作るところからクロージングまでが描かれるが、それと平行するように女性の会社をカラ売りするカラ売り屋のストーリーが走り、最後までハラハラさせられる。

排出権取引に関心がある方や、投資会社、証券取引に興味のある方は、勉強としても読み物としても十分に楽しめる内容だと思う。
巻末に、業界用語の簡単なインデックスもあるので、改めて言葉の意味を確認するのにも役立つだろう。

とりあえず、自分はハードカバーの本書を持ち歩き、通勤電車で読み上げたのである。

The芸人学

ラリー遠田さん 著者
THE 芸人学 スゴい!お笑い 戦国時代をサバイバルする30人の成功法則
ラリー 遠田
東京書籍
売り上げランキング: 84523


この本は、「芸人になるために学ぶこと!!!」的なマニュアル本ではない。

所謂、最近売れている、売れていた?お笑い芸人の方々の自己プロデュース方法や、自分が生き残るための場所を確保するマーケティング術、コミュニケーション術なんてのを、各お笑い芸人さんを簡単に分析し紹介している本である。

ビジネス本とまでは言わないが、それらしく会社勤めをしている一般人の方々にも応用出きるかも?という感じで各ビジネス術ごとに芸人さんを紹介しているので、頭を使わずのんびり読書を。。。という感じでサラリと読めるだろう。

むしろ、しっかりプロモーションの術を知りたい!!!
というような方には、
「ん?自分達が普段テレビで見て感じてる彼らのイメージを文書化しただけじゃん?!」
なんて物足りないどころか、目的とは全く違う本である。

自分も、ついつい「オードリー」の技術について紹介されていたのと、最近難しい本ばかり読んでいて文字の大きな読み物が欲しいなぁ。。と思っていたので手にしたのでサックリと読み終わってしまった。
特にこれという掘り出し情報も無かったが、芸能人本の一種として娯楽的に読むには良いだろう。

悪の税金学

大村大次郎さん著者

悪の税金学―サラリーマン税法の盲点をつく
大村 大次郎
双葉社
売り上げランキング: 66925
おすすめ度の平均: 3.5
3 為政者になめられているサラリーマン
4 退職したら海外移住するという手も意外と良いかも
4 肝心の不動産事業についてもう少し実践的な内容が欲しい


久しぶりにエッセイというか知恵本というかサックリ読める本を手にした。
と言っても、このくらいの厚さの税金関係本は大体書いてある事は同じなので、自分にとってこれと言った目新しい事柄は無いのだが、「悪の。。。」なんて書かれて、しかも著者は「元国税調査官!」なんて書いてあると、何だか素敵な法律の抜け穴が?!なんて悪戯な小悪魔心が躍らされるのが憎い。

まぁ結局のところ、
「サラリーマンはもっと自分達の給料から控除されている所得税について関心を持ちなされ!」
的な耳にタコな事と、
「副業するとこんなに税金払わなくてすむかも知れない方法があるよ!」
てな事が書いてある。
う〜ん。。。既に数年前から週末起業や副業って言葉が雑誌で特集される程の大衆性がある事から考えると、今更「悪の!」なんて大それた事でもないなぁ。。。

そして、こういった税金の抜け穴的な本に確実に書かれている事で、安易に勧めちゃダメでしょう。。。と常々思う事が、この本にも例に漏れず書かれている。
そう、「究極の税金対策?!」なんて言いながら紹介される
「業務委託契約」についてだ。
どういう事かい?って言うと、
「今働いている会社との雇用契約を解除し、1個人事業主として業務委託契約に切り替える」
なんて安易に手を出すと痛い目に合いかねない提案。

一見、個人事業主として税務署に届け出を出すと家賃や光熱費、新聞、雑誌、書籍、お茶代、軽食代なんてのが経費になり総所得額から経費を控除した金額に税率を掛けるから納税額が低くなる!
なんて素敵な魔法のように聞こえるが、
「雇用契約が如何に自分を守ってくれているか!」
と言う事を十分理解してから業務委託契約にするかを考えた方が良いだろう。

企業側からしてみても、雇用契約で支払わなければならない社会保険・雇用保険料金の負担や退職金、賞与、その他福利厚生費を業務委託契約にする事により一切支払う必要が無くなるので経費削減である。
しかも、業績悪化に伴い人件費の削減となったら、真っ先に業務委託契約者が切られるであろう。
それだけ雇用契約者は安易に辞めさせられない法律があるのである。

更に、業務委託契約と言うと直接個人事業と企業との契約なので、何かしらの不祥事が発生した場合、「損害賠償!」なんて怖い自体も無きにしもあらずだ。
勿論、雇用契約であっても会社に損害を与える事項や犯罪は損害賠償の対象だが、
「パソコンにお茶をこぼして壊した!」なんて事の修理代も個人事業負担で!
なんて話にもなるかも。。。

てな事をあまり真剣に語らないってところが自己責任の範囲と言われてしまえばそれまでだけど。

起業や副業のブームに乗り遅れて情報収集してない方には、改めて
「こういう感じの税金対策方法もありますよ入門」
という事で手にとってみるのも良いかもです。
ちなみに人生設計は慎重に! あしからず

怒らないこと

アルボムッレ・スマナサーラさん著者

怒らないこと―役立つ初期仏教法話〈1〉 (サンガ新書)
アルボムッレ スマナサーラ
サンガ
売り上げランキング: 875
おすすめ度の平均: 4.5
5 怒らない人生に出発。
5 怒る人は頭の悪い人だ、肉の塊だ
5 わかりやすくて、びっくりします!
5 怒りは火遊びのようなもの
5 怒りを観察し、発生しないようにする


普段から自分はあまり怒らない。
というより、怒った後に収拾をつけることが面倒に感じることが嫌で、いつの間にか怒らずに過ごし、あまりにも度が過ぎる事が起きると予告無しに切り捨てる。
卑怯と言えば卑怯な手段だが、それが癖になっている。

勿論仕事は別。
怒るというよりは注意するべき事は注意し、同じ過ちは3度まで根気よく教えるスタンスでいる。

さて、この本、かなり巷では評判は良いようなのだが、自分には全く向かなかった。
もともと著者は日本人ではなくスリランカの初期仏教長老の方らしいので、翻訳の仕方に拒否反応が出たのかわからないが、
「怒っているような自分勝手な人は、ひたすら無視しなさい」
とも取れる教えもあり、どちらかと言うと「人類皆兄弟!」的な仲良しさん万歳な話ではなく、己で生きていくのみ!な感じがした。

何故怒りという感情が発生するのかを書かれていても、極論過ぎて逆に読んでいて気分のいい表現では無いところもある。
こういう教えの類に迂闊に手を出した自分の責任でもあるが、ある程度精神を極めた人じゃないと、この教えに納得するのは難しいのではないだろうか。

聖書が全てを赦す教えであったら、この仏教は、
「わからない人は勝手にしなさい、わかる人たちだけでいいんです」
という排他的に感じた。
それを踏まえて自分がどう思うかなのだろうが、そもそも人間に過ちはつきもの。
悟りを開いていく事で人間らしさを失うのであれば、その先に何があるのだろう?
なんて軽く頭の休憩に読むつもりの本で重たくやられてしまった。。。

まぁ、この本を読まなくても自分は一生煩悩の塊であるような気がするのであった。

ネットで売れるもの売れないもの

竹内謙礼さん著書

ネットで売れるもの売れないもの―商品選びで成否の8割が決まる
竹内 謙礼
日本経済新聞出版社
売り上げランキング: 74726
おすすめ度の平均: 3.5
4 巻末の特別付録が素晴らしいです!
1 またか・・・
4 ネットを有効に活用するための方法論について述べられている。
2 話半分
5 この本の使い方


本書は、過去に楽天市場のショップオブザイヤー「ベスト店長賞」を受賞した著者が経験をいかし、ネットで商売するにあたり商品の選び方や販促方法などを紹介している。

ビジネスのノウハウ本はネットビジネスに限らずたくさんあるので、たまに手に取ることがあるのだが、あんまり役立てた事は無い。
本書がどうこうではなく、あくまでも自分の不足している知識やヒント、いつしか忘れそうになっていた初心に帰るのに有効な場合もあるのでサラリと目を通す。

ちなみに本書は昨年2008年の8月に出版されているので、それから現在までの小売価格崩壊を考えると販促手法などはあくまでもこういう手法があると言う参考だろう。

ただし、本書は「こうすれば売れる!」なんて秘伝を教えているのではなく、「こうしたからと言って売れる訳ではない!」という教えがある。
これは、これからネットビジネスを始めようと検討している方は参考にされると良いかも。
ネットビジネスも熟した段階を通り過ぎ、撤退する会社、お店も少なくない。
しかしこれをチャンスとするかどうかは自分次第だろう。
その上で、色んな調査資料や体験談などに目を通すことも悪くは無いと思う。
まぁまずは資金収支が見れないと事業は何でも難しいんですケド。

特別付録、巻末の「ネットで売れるもの、売れないもの辞典」は、なかなかためになると思う。かなりのページも割いているし。
著者が5段階評価で難易度を評価しているのだが、あえて難易度の高い商品の販売手法が閃けばビジネスとしての一歩が踏み出せるかも?!

久しぶりに本書を引っ張り出して初心に帰る一幕であった。

正義で地球は救えない

池田清彦さん、養老孟司さん著者

正義で地球は救えない
池田 清彦 養老 孟司
新潮社
売り上げランキング: 16209
おすすめ度の平均: 4.0
3 主に池田清彦氏による愚痴
4 とっても大切な本だと思う
4 複眼的思考のトレーニング
4 わかりやすい!!
4 ぶったまげた極論もあるが良書


本書は、環境問題の一つ一つを解説した本では無く、過去とは違う現象を環境問題にあてはめ、規制を作り本質を見失っている世界的な動向を著者達がレポート形式、対談形式で非難もしくは警告?している本である。

世の中を賑わしている環境問題騒動を「そうとは限らない!」という視点で真っ向否定する場面もあり、賛同する部分と読んでいて何だか嫌な気持ちになる部分がある。
表現の仕方なんだろうが、どうしても著者の文面を読むと
「公表されている事を否定して非難する事は、勇気を持って公表する事より簡単では?」
と思ってしまうのだ。
著者自身も「ここがおかしいんじゃないか?」と言うだけ色々と調査していて、読者である自分にも納得出来る判断材料を提供しているのだが、人の揚げ足を取っている風にも感じる。これは好みの問題だが。

著者の言うように、現在の世界的環境議論の裏にいる「CO2削減のための排出権取引」なんてのは、国家間の私利私欲がうごめいていて、せっかくの取組みを台無しにしているのでは?とは自分も思っている。
既にいくつかの本や研究者のレポートでは、
「温暖化の原因はCO2とは言い切れない」
との発言もあるし。

環境問題は、専門家でなくては判断が難しいように感じるが、専門家と言えども今までに経験した事の無い事象を、過去のデータから推測し、システムにより未来を予想した結果で判断しているにすぎない。
物事には何かしらの指標がある事はいいと思うのだが、そこに便乗するルールは如何なものかと。

環境を考える時、個人レベルで行動するのと社会レベルで動く事では影響力は大きく違う。
極端な話、次に作動させる動力や、電力の供給が無ければ消滅してしまう事項を考えずに言うと、各自が電気をこまめに消すより、国が一定の時間電力供給しない方が遥かに消費電力を下げる。
この案は勿論不可能だが、社会が動く事によりその影響力は遥かに大きい。
それを踏まえて行動出来る社会になれば。。。
勿論、それが正しい方向に進むことが重要。

途中、著者達の会話の中で地熱発電に対する意見が出てくる。
つい最近地熱発電に奮闘する経済小説「マグマ」を読んだので、何だか親近感が湧いた。
ちなみに本書を読むのは2度目である。
どうも心が挫けて最後の最後で投げ出したきり読んでいなかった。
本棚の整理と共に手に取ったので再び読んだのだが、
本書が発行されたのは2008年10月。
当時と全く変化のない環境問題へのアプローチにむしろ驚いた。
エゴ。。。それがある限り明るい未来は遠いのかも。

環境問題の本は、排出権取引などの会計や動向等の関連本を含め月に数冊読むのだが、考え込んでしまう事が多いのでなかなかブログに書き散らかせないでいる。
今回久しぶりに心の思いを少し吐き出した。

環境に限らず、貧困、フェアトレードの本もいくつか読んでいるが、皆声高には言わないが必ず触れる事、いや行き着く先がある。
「人口問題」だ。
日本は、少子化と言えどもこの小さな島国で人口密度は高い。
世界をみても人口過剰な国がほとんどなのだ。

環境問題に発言権を持つ人が、
「人類が多すぎるのだ!!」
なんて発言したら大問題!失脚するかも知れない。
このまま人類が増え続けたら食料問題、水問題と次々な問題が起こる事を知っていながら、まるでタブーのような扱い。

そうではなく、著者も言うように、
今生存する人類をどうこう考えるのではなく、環境問題を声高に言いながら、自国では少子化で国家力の衰退を心配して政策を練るよりも、もっと広い目で人口問題に本気にならなければならないのでは無いだろうか。

う〜ん。。。やはり自分の考えが「こうだ!」と言い切れないので、なんとも歯切れの悪いブログになってしまった。
難しいなぁ。。。気持ちを文字にするのって。

お金の味

金森重樹さん著者
借金の底なし沼で知ったお金の味 25歳フリーター、借金1億2千万円、利息24%からの生還記
金森 重樹
大和書房
売り上げランキング: 594
おすすめ度の平均: 4.5
4 借金あっても何とかなるんだね〜
5 金森さん、有難う。
4 他の本と併せて読みましょう
4 多額の借金を背負った経緯から返済までの体験談
3 いいけど…


この本は、現在、株式会社を設立され、不動産会社、ホテル経営、行政書士事務所と幅広く経営に携わる著者の実体験が書かれた本である。
ちなみに経歴等は、本書の著者プロフィールを抜粋させていただいた。

さて、「借金の底なし沼で知った お金の味」という事で、
上京して来た著者が、引き返せない借金に陥るまでの過程と、
そこから生還するまでが書かれているのだが、読みやすい語り口調である。

所謂普通の大学生が、卒業後ぼんやりと将来を定められずに生活しているという極々一般的な人生の中で、たまたま知恵のある人と、たまたま窮地に立たされている営業マンに、たまたまその時に出逢ってしまった事から借金という重いものを背負う。

ここで言いたいのは、著者が特別な欲があったから借金するに至ったのではなく、誰にでも起こりえる「気付いたら雪だるま式に膨らむ借金地獄」があると言う事である。

人の優しさは、常に思いやりの心からくるものとは限らない。

騙す方が悪い、騙される方が悪い、堂々巡りの問いだが、
騙される方には「知らなかった」という自己責任を問われるものもある。
著者も何度か本の中で「世間知らず」という気持ちを呟く。
学校では絶対に学ぶことのない勉強が世の中にはあるのだ。

そして著者は始めに格差社会をちらつかせている。
やはり、大金持ちに生まれるのと貧困に生まれるのでは、手に入れられる物のスタートラインが違うのだ。
それは教育で考えると分かりやすいが、私立大学、医大、ものすごくお金がかかる。
子供の教育投資に十分に答えられる家庭がどれだけあるか。

著者は、東京大学で学ぶにあたり格差を目の当たりにしている。
そして「あたり前」として与えられる物事の「何故」を考えないと「世間知らず」になり思い通りにならない現実に対処出来なくなるのかも知れない。

裁判にまでなった著者の借金。
生還するにあたり、ものすごく努力されたと思う。
本書では「血の滲むような努力でぇえええ!!!」とは書かれず、さらりと書き上げているので読んでる自分がどんよりする事は無いが。

ただ、個人的に生還への道に格差を感じた。
著者は借金返済のため就職されているのだが、その仕事は、高卒、資格、経験無しではなかなか与えられない仕事だからだ。
これは著者の能力と東大卒というブランドがあったからだと思う。

人は窮地に追いやられると、自分が知っている以上の力を発揮する。
その発揮する土台が違う。
どん底から返済への取っ掛かり、そして力をつけていくまでの過程がサックリとしか描かれていないのが残念である。

もしも今、借金返済の可能性が1ミリも無い人が著者と同じ道を辿る事はなかなか難しいだろう。
もちろん、「真似をすれば大丈夫!」という本でも無いしそんな本はどこにも無い。
「発想の転換」これこそが著者が這い上がった秘訣なのだろう。

いつか自分が莫大な借金を抱えて首が回らない事になったら、著者の秘訣を思い出したいと思う。
借金しないに越したことは無いんですけどね。
会社は「借入れ」という借金、そして負債を抱えて成長する過程が出てくる事があるものです。

絶対貧困

石井光太さん著者
絶対貧困
絶対貧困
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石井光太
光文社
売り上げランキング: 32609
おすすめ度の平均: 4.5
3 貧困を見る、中道に立つ視点
5 「世界」を知るためにぜひ読みたい一冊
4 わかりやすく貧困国の実情を伝えてくれる。
5 踏み込んだ世界!
5 なるべく多くの人に読んでもらいたい。


久しぶりに世界で暮らす人々の貧困について改めさせられる内容である。
著者は、貧困と言われている発展途上国のスラム街や売春街に行き、実体験を自分の目を通してリアルを伝えている。

う〜む。。。何だか重い内容だなぁ。。。
なんて思ってこの本を読まなかったらもったいない!
多分、著者は気さくな人物で、深く考え込むよりもありのままの現実をすんなり受け止めて「あぁ、こんな風に考えてやってるんだ。まったくぅ」なんて時に面白可笑しく、そして暖かく見つめているように思う。

勿論、「貧困」という事が喜ばしい事では無いに決まっているが、格差社会が存在する以上、富ある人々と貧しい人々は確実に存在する。
「可哀想。。。」
なんて綺麗事では無いのだ。

と、のっけから熱く語る程タフな内容ではなく、貧しいからこそ生きていかなければならないその手段と生き様にしばしば圧倒される。
正直、著者が訪れたインド洋を囲むアジア、アフリカの発展途上国では無く、日本という先進国に生まれたことをまず感謝しなければならないと思った。
彼等と自分が何が違うかと言えば、生まれた場所、生まれた環境。
それら全てを運と言ってしまえばそれまでなのかも知れないが。

勿論、先進国でも職業難や心の病、ニート、なんて社会問題は存在するが、彼等とはまずスタートが違うのだ。
日本では圧倒的に義務教育まで学習している人は多い。
しかし今日、明日の食費にまで困っている貧困の人々にとって教育費用まで捻り出すなんて至難の業!でも教育を受けなければ一生そこから這い上がれない。
その思いから子供に教育を受けさせるために体を売る事でしか収入を得れない人々もいれば、物乞いで生計をたてる人々。
皆それぞれ這い上がろうと必死なのだろう。

しつこいようだが、この本は「可哀想だね」「何とかしてあげなきゃ」なんて慈悲を請うようには書かれていない。あくまでも事実を感じたまま伝えてあり、貧困生活においても人である以上、絶対に存在する性欲、夜の話なんてものにも触れている。
ときおり写真やグラフなんてのも掲載されているので、電車の中で立ち読みしてる際、ば〜んッ!と頬を染める写真が現れた時は思わず本を小さく綴じ、たまにおじ様がスポーツ新聞の桃色面を器用に折りたたむ心情に駆られたりもした。

まぁ何故に諸外国の貧困に関して思いを込めるのかと言うと、以前、仕事で訪れたバリ島で勝手な勘違いをしていた事に気付き、
「はうッ!無意識に失礼な見方をしていた!」
と、自分の無礼な見識を恥じたことがあるからである。
まぁこの話は、海外武勇伝バリ島編でいつかお伝えしたい。

ともあれ、「ありゃりゃ、全くぅ」と肩をすくめたくなる出来事や、「はうぅ。。。勝手に思い込んでいたなぁ。。。ゴメンよぉ」と、一つ一つ自分の尺度を改めたくなる、ちょっと肩の力の抜ける一冊である。

マグマ

真山仁さん著書

マグマ (朝日文庫)
マグマ (朝日文庫)
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真山 仁
朝日新聞社
売り上げランキング: 23838
おすすめ度の平均: 4.0
4 地熱発電の可能性と、若手外資プレーヤーの奮闘
4 夫唱婦随
2 地熱発電解説書
3 ちょっとありえないストーリー
5 野上妙子に会いたい


ハゲタカの著書で有名?な真山仁さん。
自分もハゲタカの小説から著者の虜になったのだが、今回の作品も買収ファンド、別名ハゲタカファンドにて企業再生に携わる女性、野上妙子が主人公である。

突然、主人公の所属する部署が無くなり、買収した会社の再生を任命されるのだが、その会社の事業が「地熱発電」という壮大な事業を研究していて、一筋縄ではいかず、しかも公共事業に真っ向勝負を挑んでいるため政治が絡んでいたり。

金融的な読み物としては、「私欲が絡んだこういうテクニックもあるよ」的な手法が主人公の目を通して上司をチクリと皮肉る場面にて少々あり、ほほぉ〜ん、なんて思えるところもあるが、なんと言っても金融の話だけではなく、メインである地熱発電の話が面白い!

現在の原子力発電に頼り切る社会において、被爆の危険性や、原子力発電から出る廃棄物、強力な武器ともなる核の保有、その他のリスクをぼやかしながらの生活は果して正しいのか?!
なんてな思いにもかられる程、詳細に発電システムが描かれている。

あくまでも小説の中だけでの話し。
と決め付けてしまうのは簡単だが、著者の情報収集力、そしてそれを小説という形で表現出来てしまう力に脱帽。
自分も専門家では無いので、何が正しいのかなんてわからないが、主人公も全くの業界素人という設定により、同じ目線で事業の中身を固めていく。
なのでわかりやすい。
化学式だ、薬品がどうだと言われてもピンと来ないし。

そもそも、このストーリーが何を目的としているかと言う筋がぶれないので、読み物としてとても優れていると思う。
自分が何様で批評しているのかもわからない程の上から目線。。。てへ

登場人物達も容易にイメージする事が出来てこれまたお見事!
ちょっと過剰に評価しているのかも知れないが、経済小説として目が離せない作家さんの一人として、今後の作品にも注目したい。

まだ著者の「レッドゾーン」読んでないんだよなぁ。。。
ハードブック。。。買うべきかなぁ。。。

悩む力

姜尚中(Kang Sang-jung)さん著者
悩む力 (集英社新書 444C)
姜 尚中
集英社
売り上げランキング: 938


タイトルからして哲学的な内容かと思いきや、夏目漱石の思想分析?もしくは夏目漱石著作の紹介本のように感じられる部分が多くあった。

「悩む」と言う誰しもが行っている行為を、夏目漱石とマックス・ウェーバーと言う社会学者の2人の思想から現代社会に生きる我々と対比している本のようにも見えるが、投げかけた問いに対して著者の見解が進もうか!とすると夏目漱石の文学本の内容が紹介され、「漱石はこうであったのではないだろうか」的に締めくくられる。
ほとんどの章がその流れで終わっていくので、やはり夏目漱石の本の紹介?というキョトンとした状態で一人置き去りにされ次に進む。

タイトルで色々と想像してしまったからよくないのだろうが、「悩むとはこうである!」「少年よ悩んで、悩んで、悩みぬけい!!!」てな教本では無いし、「人は考える葦である。」的な哲学本でも無い。
では、一体どんな本だい?
う〜む。。。自分には表現出来ない。
一読したものの、何か心に残る事があったわけでもなく、もともと自分自身が悩んで悩んで生きているのでさして目新しい事実も無かったし。。。

普段悩むことに重きを置いてない人が読むと、
「はうぅ!そうかぁ。。。自分で悩んで考えて答えを見つけ出すことの大切さってあるんだぁ!」
と、思えるかも知れない。
思い出したが、自分の脳内メーカーの結果は、脳全体を「友」の文字が囲み、内側全部が「悩」だった。
。。。当たってるのかしら。

極評してきたように思われるのも気が引けるので、1章だけ共感できる部分を紹介。
「第三章 「知ってるつもり」じゃないか」
この章で「情報通は知性か」と、著者が問いかけているのだが、問いに対して2つは別物だと著者は言う。自分も著者の意見を読んでみて「そうそう!」なんて同意。
簡単に言うと情報化社会の現代において、知らないことはネットで検索すればほぼ答えが出てくる。
そこから出した答えを知るのと知性とは別物だと言う訳で、ネットを検索して知ることは情報を扱う技術に長けている、なんてな話だが、「その通り!」と唸る。
おばあちゃんの知恵袋だとか生活の知恵なんてものは、経験してきたからこそ生み出されるものであって、未経験でネットから知る事が出来ても違う展開になった時に応用できるか?!そこが問われるのではないだろうか。

著者の話にも出てくるが、自分達が老人になった時、子供達に教えられる知恵は果して備わっているのだろうか?
時代は常に変化しているが、大人を尊敬出来ない寂しい時代に成りきってしまわなければ良いが。。。なんてまた悩むのであった。

財務3表一体分析法 「経営」がわかる決算書の読み方

國貞 克則さん著者

財務3表一体分析法 「経営」がわかる決算書の読み方 (朝日新書)
國貞 克則
朝日新聞出版
売り上げランキング: 1835
おすすめ度の平均: 4.0
4 近寄りがたい会計学、、、なので、こういう本も必要だと思われます
3 財務諸表を俯瞰する基礎的手法
4 図表にするとわかりやすい
4 ボクの様な初心者が分析を始めるにはちょうど良い方法
4 財務諸表の分析を始める一冊


久しぶりに本の紹介。
世の中には決算書の読み方や、わかりやすい会計の本はたくさんある。
どれがお勧め?
と、問われても、質問者がどの辺りの知識があるのかわからないので難しい。

戯言はさておき、この本は経理実務の話ではなく、その先の出来上がった財務諸表の分析方法について上場会社を例に同業他社比較をわかりやすく教えてくれる本である。
分析本なんてのも色々あるが、この本では著者オリジナルフォーマットを使用して電機、百貨店、携帯、金融etc...業界のBS・PLを作成し比較分析している。
これはとてもわかりやすい!
ROE、レバレッジ比率、総資本回転率、当期純利益率、財務分析に重要な数字を使って話は進んで行く。
著者の図表が見やすいため、見開きで同業他社比較をしているページは瞬時に経営状況を把握することが出来る。
勿論、その一瞬の状態でその会社を判断するなんて事ではなく、5期比較なんてのをしながら追々把握していく。

会計本を読む人にありがちなのが、読んでなんとなく把握して終わり!なんて事だと思うが、著者も言うように実際に上場企業の決算書から数字を拾って図表にする事をお勧めする。
より理解が出来るし、やはり手を動かすことの記憶の方が忘れにくいと思うし。
更に企業が出している有価証券報告書の中身を覗いてみるとその期起こった全ての理由が要約されている。

親切なことに、この本には実際に作図する作図マニュアル伝授の章がある。
エクセルを使って丁寧にピクセル指定までしてくれているので、どうやって作図したらいいかわからないから。。。なんて手を動かすのを諦めていた方は、是非一度お試しあれ!である。
ちなみに自分はこのオリジナルフォーマットを作成してはいない。
会計ソフトと言う強い見方によりサックリとデータが作れちゃうんだもの。
しかも最近の会計ソフトは良く出来たもので、分析画面でグラフなんてスイスイ出来てしまう。
まぁ会計ソフトはお高いし仕事以外で使う人も少ないだろうなぁ。。。

初心者向け!とまでは簡単では無いと思われるが、
財務諸表とは何か!までわかる方は、次のステップにこの一冊でお勉強なんてのも良いのでは。
読書の秋に如何でしょう。

汝、買わずしてどう生きる?!

今月号のPenである。
Pen (ペン) 戦国武将。 2009年 9/1号 [雑誌]

あぁ。。。なんて事してくれるんだい。。。
こんな特集号出されたら買ってしまうやろぉ!!!!!

と、言う今回の戦国特集。
なんて書き散らかそうとしている現在、実はまだ熟読していない。
ペラペラと中身拝見してみる。
「またどうせ信長とか秀吉とか有名どころの武勇伝とかでしょ?」
なんて思ったあなた!
今すぐ町内引きずり回しの刑、もしくは焼き討ちにあってもおかしくない程の勘違い、いや、見切り発進を恥よ!

「古田織部」「細川忠興」「藤堂高虎」
歴史に熱くなければキョトンとしそうな人物の紹介から、甲冑のデザイン説明、旗印、城などがカラー写真によって上品かつ敬意を表して紹介されている。
そして!何と言っても私の心を一番突き動かした
「特製戦国武将家紋シール」
の付録である。(もちろん真田の六文銭シール有!)
未だかつてこれ程の心ときめいたシールは無いだろう。

その他、簡単ではあるが家紋の説明もあり、有名どころの家紋だけではなくユニークな意匠をカテゴリー別にこれでもか!と紹介している。

戦国ブームも捨てたもんじゃないなぁ。
また一つ戦国バイブルを確保してご満悦になるのであった。

ドアD

山田悠介さん著者
ドアD (幻冬舎文庫)
ドアD (幻冬舎文庫)
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山田 悠介
幻冬舎
売り上げランキング: 74673

以前、著者のデビュー作である「リアル鬼ごっこ」を読んだ事があり、結末は「?」と思ったものの、シュールなネタを書くなぁ。。。なんて思った事があり、たまたま友人との待ち合わせでプラプラしてた本屋さんで文庫化された本書を手にとってみた。

ストーリー的に新しい発想ではなく、読んだ人は高見広春さん著作の「バトルロワイヤル」のような感じや、映画「CUBE」みたい、なんて表現する人も多いのではないだろうか。
「閉じ込められた人々、最後に生き残るのは?!」と言うサバイバルホラーである。

あぁ、ちなみに最近ホラーゲームを体験したなんてブログを書き散らかしたので、スプラッター好き?!なんて思われたかも知れないが、そうではなく人間心理にとても興味がある。
心理学的なところまで深く関心を持っている訳ではないが、人間の本質とは、極限状態にある時や無意識の中で一番現れるのではないかと思うので、精神状態を取り扱った作品は小説しかり映画しかり気になってしまうのである。

バトルロワイヤル、CUBE,ドアDでは仲間内で最後に残る者の行き残るまでが描かれる。(もちろんそれだけではなくそれぞれの感情の変化が描写されるが)
根拠はないが、個人的に現実では短時間で仲間を捨ててまで生きると言う結論に到ることは少ないのではないかと思う。
これが長時間の持久戦だったり、全く見知らぬ他人だと違うのだろうケド。。。

「家族でも親友でも自分以外は皆他人。実はお互い知らない事の方が多い!」
なんて考えると疑惑や疑心の塊になるが、実際はもっと単純に考えていて他人をここまで知っているという自意識がお互いの信用になって関係性が出来上がる。
パニック状態の時こそ本能で生きる事への執着心が強くなり「弱さ故に群れを成す」により共存する事を選ぶ気がするんだけど。。。
戦争を知らないからこそのキレイごとかなぁ。。。

しかし、この本のような理由無く巻き込まれるサバイバルストーリーは苦手だ。
心の落ち着けどころが無いと言うのも理由の一つだが、理解不能なストーリーにどこか嫌悪感があるのかも知れない。
SF的要素が入った瞬間、それまでの心情心理が作り物のように感じるし。

とりあえずサラリと読んでしまったものの、リアル鬼ごっこ以来の著者の作品だっただけにシュールな期待が大きかったせいか「あれ?」と思った本書である。

真田熱再燃!

とあるランチタイム。

女人4人でモグモグしていると、読書の話題になった。
読書は最も個人の趣向が表れるもので、自宅で最も見られたくない場所は本棚だと言っても過言では無い。

さて、エッセイ、小説、写真集、なんて女人らしいカテゴリーが飛び出る中、私はビジネス本と言う言葉を発する。
ほぉ〜ッ。。と、一瞬の感嘆の声。
全くいないとは言わないが、ビジネスコーナーで他の女人と遭遇する機会は少ない。つまり、スーツ姿のおじ様達に紛れて本を物色している。

そんな言葉の後、「司馬遼太郎、池波正太郎」との渋い発言が飛び出した。
おぉ?!見るからにレディさんな女人からその言葉が発せられると心がキュンとする。
彼女は以前、女性作家さんによるエッセイや小説を読んでいたらしいのだが、結婚後、旦那様の母上に勧められて読み始めたのが最初でそれから面白みを感じ、鬼平犯科帳にまで手を伸ばしたらしい。

かくいう私も、司馬遼太郎先生、池波正太郎先生の小説をいくつか嗜んでいる。
池波正太郎先生の「真田太平記」
真田太平記〈1〉天魔の夏 (新潮文庫)
池波 正太郎
新潮社
売り上げランキング: 53027
おすすめ度の平均: 4.5
5 大先生は面白い
5 壮大な戦国ロマンを生きる、真田親子の勇姿が鮮やかに描かれていて深い感銘を受けました!
5 やっぱ面白いわ。
5 戦国時代狂
4 爽快な人物像



司馬遼太郎先生の「風神の門」
風神の門 (上) (新潮文庫)
司馬 遼太郎
新潮社
売り上げランキング: 115378
おすすめ度の平均: 5.0
5 伊賀忍者と甲賀忍者にこんな違いがあったとは・・・
5 忍豪作家と呼ばれた司馬の面目躍如、アクションスパイ大作
5 読みやすい司馬作品のひとつです
5 懐かしき忍者達!


ちなみに、この2大巨匠の本に触れていたのは後に知った。

小学生時代、「絶対忍者になる!」と言う夢を叶えるべく忍者に関する本を読み漁っていた。
当時は甲賀・伊賀の忍者の話を読む事が多く、後に虜になる真田昌幸戦国武将も忍者を雇う一お偉方くらいに思いながら脇役として接触はあった。

風神の門に続き、この「真田十勇士」もやはり「忍者ってかっこいい!!」目線である。
真田十勇士 (人物文庫)
村上 元三
学陽書房
売り上げランキング: 64680



時が経ち「忍者にはなれないんだ。。。」と悟ってしばらく、何気なしに目にした
真田忍侠記 (上) (講談社文庫)
津本 陽
講談社
売り上げランキング: 339981
おすすめ度の平均: 4.0
4 真田の忍びといったらこの二人。だけど・・・

ここで、忍者より真田親子、と言うより真田昌幸氏に心が動く。
読み方によっては打算的と言うかも知れないが、物事に一喜一憂せず見据える力に一目惚れならぬ、一読惚れした。

それから、真田昌幸熱が加速!
我ながら今で言うアイドルの追っかけならぬ執着を見せた。
謀将 真田昌幸〈上〉
謀将 真田昌幸〈上〉
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南原 幹雄
新人物往来社
売り上げランキング: 340191
おすすめ度の平均: 5.0
5 信州真田の祖

なんて本もじっくり読み、憧れだか恋心にも似た感情が強まる。
古臭い男のロマンとやらに弱い性質なのかも知れない。

と、まぁそんな日々も過ぎ去っていたのに、ここに来てまたもや渋い巨匠の名前を出された翌日、ちょっとした待ち時間が出来たのでぷらりと本屋さんに立ち寄る。
実は本屋さんは私にとっては危険な場所だ。
興味のある本がどっさり置いてあるがために、お金を最も浪費する。

案の定、心が動いた言動は予期せぬところで浮上。
新刊平積みされた本の中に「真田」の文字を発見してしまう。
それが、
真田三代―幸村と智謀の一族 (学研M文庫 は 9-2)
橋場 日月
学習研究社
売り上げランキング: 37574

もちろんお買い上げしてしまった。

ちょっと時間潰しが思わぬ出会い。
もしかした真田一族の陰謀なのか?!
一人ドラマチックな展開を妄想しながら現在読みかけの本を放棄して読み始めた。

そしてこの後、待ち合わせした友人と戦国武将の話でお酒も進み夜が更けるのであった。

虚像(メディア)の砦

真山仁さん 著者

大好きな著者の本である。
虚像(メディア)の砦 (講談社文庫)
真山 仁
講談社
売り上げランキング: 41528


この本は、テレビメディアの裏を痛烈に描写しており、もしかしてリアル情報?!と思わせる程、現実社会と登場人物がリンクする。

報道番組の危険性、現在のお笑い番組への警告、読み手によっては皮肉な話とも読めるかも知れない。

ストーリーは、海外の戦争中である危険地区にて日本人の一般市民が拉致されるという事件を軸に、主人公であるニュース番組のディレクターが、本物の報道番組を作るための取材を行おうとする先々で方々からの圧力による困難、一方、視聴率の数字に振り回され笑いの真髄を忘れているお笑い番組のディレクターの番組作りの葛藤が描かれる。

法律に抵触するギリギリのラインで政治的圧力がかかる報道、それに従う責任者の局長を始め、不屈の精神だったはずの幹部達。
そこは、ただのメディアの陰謀ストーリーでは終わらない著者である。
企業犯罪なんかもチラホラ。

著者の作品は、一気読みが出来なかった時なんかは、続きが気になって早く読みたい!と思わせる作品が多い。
この本も500ページの単行本でどっしりしているが、サクサクと読まされる。

何か本でも。。。なんて考えてる時は、男臭いこの1冊はお勧めである。

破産執行人

杉田望さん 著書

破産執行人 (講談社文庫 す 8-8) (講談社文庫)
杉田 望
講談社
売り上げランキング: 256193


経済小説である。
著者の作品は初めて読んだが、プロローグから第一章にかけて登場人物が勢ぞろいする。
正直、現実世界でも顔と名前を覚えるのに時間がかかる自分としては、登場人物の多さになかなか誰が誰でというのが一致しなかった。

実は読み終わった今も、最初のシーンで出てきた人達と終わりに自分の中で出来上がった人物像とが一致していない。

しかし、内容は読み進む内に面白くなる。
未上場会社の老舗の製菓会社を巡って経営権争いが勃発するというのが大まかなストーリーの表面だが、その裏面では上場益に群がるドロっとした話から、事業を守ろうとする人々の思い、一族経営者の公私混同、様々なドラマが描かれている。

そもそも経済小説は、現実社会をモチーフにしたものが多く、時には皮肉もあり、時には教えもあり、大変勉強になるし感慨深い。
個人的にそういった部分が好きで読み漁ることが多い。

「会社は誰のもの?」よく出る言葉だ。
株主、経営者、労働者、その立場で答えは違ってくるのかもしれない。

労働者「労働者がいなければ商品もサービスも完成しない」
経営者「事業がなければ労働者を雇うこともない」
株主「資金がなければ事業を起こせない」

全てその通りだと感じる。
ただし、一人で自分の貯金で事業を起こし、自分だけで運営して成り立っている会社ももちろん存在する。
その場合、会社はその個人のものか?
私は違うと思う。

個人事業の場合、全ての収支は個人収入と相殺されるため個人のものであると言えるかも知れないが、それでも私は会社や事業は「社会のもの」だと思う。
必要としている社会があるからその事業があり、そのサービスを提供するために労働者がおり、その事業を継続させるために経営者がいて、資金出資の株主がいる。
株主、経営者、従業員は時代の中で移り変わる。
しかし会社は、必要とされている限りいつまでもあり続ける。
創業何百年という会社は社会に末永く必要とされているのだろう。

この本も「会社は誰のもの?」という言葉が見え隠れする。
答えはそれぞれの価値観だが、小説の中だけの話とは思わず、自分の環境に置き換えて考えてみるのもたまには良いかも知れない。

環境問題、ウソとホントがわかる本

杉本裕明さん監修・造事務所編著

「なんでもかんでもエコって言うな!」
というふきだしと共に、現在のエコブームを検証している本である。

環境問題、 ウソとホントがわかる本
造事務所
大和書房
売り上げランキング: 184512


監修が環境ジャーナリストであるという事もあり、一つ一つの情報が専門分野から検証されている。
プラスチックゴミの焼却について、ヒートアイランド、バイオエタノール、エコラベル、紙や電化製品のリサイクル、一般的にエコ問題としてあげられる主要の問題について「私達が認識している情報は本当か?」という検証なので、「目から鱗が!」と言わないまでも「ああそういえば。。。」的な考えが浮かぶかも知れない。
ちなみに専門的な言葉や数値の羅列がされているような、こ難しい本ではなく、一つの問題に4ページ程を割いており、その中に絵や図表なんかも挿入されているので、豆知識的なイメージで手にされても良いかと思う。

売れている環境本には、「この表現は間違っている」や「これは嘘だ!」という指摘だけをして、「こうすれば良くなる」という提案までされている本は少ない。
しかしこの本は、本の後半半分に簡単ながらも「これからの地球にやさしいプロジェクトはこれだ」という紹介もしている。

環境問題に対して、全世界でいくつかの世界的プロジェクトが動いている。
正直、政治が絡むと国益が絡んでくるので「地球のため、これからの子供達のため」という思いが蚊帳の外になりがちなのは否めない。
エコブームも、ブランド化した企業戦略な部分が多い。
本当に環境汚染をおさえ、無駄を無くしていくものであれば、社会にムーブメントを起こし定着させるのは重要なことだが、便乗しているだけの物であり、結局有害なゴミとなるのであれば社会的使命は果たさないだろう。

環境問題の本を読み、情報を拾い、考えると心が重い。
「何が正しいか」という事は、誰もわからないのだ。
過去のデータから色んなことを検証していく中で、それらしき答えを当てはめることは出来るが、今を生きる私達にとって地球の変化とは未知なものなのである。
ただし、だからと言って何もせずにこのまま与えられるがままの生活をしていては、取り返しのつかない何かがあるという予感は、人間にもまだ残っている動物的直感ではないだろうか。

客足が途絶えない方法教えます!

三輪健太郎さん 著者

書籍のフルネームは「僕は本場のミステリーショッパー 客足が途絶えない方法教えます!」だ。
長かったので太字になってる部分をタイトルに入れてみた。

僕は本場のミステリーショッパー 客足が途絶えない方法教えます! (光文社ペーパーバックスBusiness)
三輪健太郎
光文社
売り上げランキング: 7331
おすすめ度の平均: 5.0
5 覆面調査ってなんか胡散臭くね?
5 ミステリーショッピングは売上向上に効果的?
5 顧客目線を疑え


ミステリーショッパーとは、物販を問わず飲食店や病院、エンターテーメントなど、サービス業全般に対して、営業中に一般客として覆面調査をする人の事である。
わかりやすく言うと、毎年メディアで騒がれるミシュランの格付け無しの調査員といったところだろうか。

もちろんミステリーショッパーを専門の会社に依頼するのは、そのお店の経営者である。
現場改善、売れない理由の模索、会社理念の意思の疎通確認、様々な理由で、自社ではわからない問題点を外部の目で見つけ出すというのが目的だ。

この本は、どのように調査をするかというノウハウ本ではなく、依頼してくる会社に警笛を鳴らしている本だと思う。
ミステリーショッパーだけではなく、コンサルティングにも言える事だと思うが、海外からビジネスとして入ってくるものは、日本ではなかなかその本来の機能を使いこなせて無い事が多いと感じる。

ミステリーショッパーが見つけ出した問題点の改善策を考え出すのは、その事業の経営者であるし、コンサルティングに相談することの改善策を考え出すのも、やはりその事業の経営者である。
そこがぶれて、「外部に委託したら売上が上がる」という思いで経営者がいた場合、かなり救われないことになる。
個人的な偏見だが、日本人はなかなか外部から来たものの受け入れが苦手な人種ではないだろうか。
鎖国が長かったせい?
なんて無理やりな知識と結びつけるあたり、素人丸出しの評論である。

この本は、サービス業を営む方々が読むと面白い。
「そんなの知ってるよ!」
という事も書かれているが、改めて気付くキッカケとなるだろう。

消費者行動の心理うんぬんよりも、大事なのは一つ一つの心使い。
そう思いたい1冊である。

あの映画は何人みれば儲かるのか

松尾里央さん 著者

この本は、映画の大まかな収益構造を有名な作品を題材にして書いてあり、親近感を持ちつつ計算式等の数字もサラリと入ってくるので、娯楽的に読みやすい本である。

あの映画は何人みれば儲かるのか?
松尾 里央
TAC出版
売り上げランキング: 885
おすすめ度の平均: 3.0
3 もう少しリアルな数字を出してほしかった。
3 なるほど、コンテンツ業界ではこうやって儲けるのか


映画だけではなく、宇多田ヒカルやGacktを例にしたアーティストの収益、ハリーポッターの出版、ホットペッパーなどのフリーペーパーの広告収入について書かれている。
あくまでも読みやすい本として書かれているので、経済学やビジネスの参考書にはならないが、雑学的な知識や日常生活の街中でふと物事の仕組みについて考えるキッカケとしては面白いかも知れない。

ちなみに、この本を読んでギネス級の赤字を出したと言われる1963年公開の「クレオパトラ」という映画を観たくなった。
最近、心躍る映画を観ていないのでちょっとした好奇心でもあるが。

ちなみに映画は、オーシャンズ13、ジブリ映画、猿の惑星、ファイナルファンタジーを取り上げている。

無税入門

只野範男さん 著者

一般サラリーマンは年末調整も終わり、本年度の所得が確定した事だろう。
不動産所得や事業所得のある方々は、今月の収入支出までの所得で春の確定申告になる。
この本は、個人事業を営んでいる方も、一般サラリーマンの方が読んでも少しばかりの税金のお勉強にはよろしいかと。

「無税」入門―私の「無税人生」を完全公開しよう
只野 範男
飛鳥新社
売り上げランキング: 2365
おすすめ度の平均: 3.0
1 とうとうあなたも知ってしまいましたね
4 似たような立場の会社員としては、心強い一冊
4 善悪は抜きにしても価値ある本。
3 タイトリングが秀逸
1 この本のどこにノウハウがあるの?


この本を読んで、「無税万歳!」を勧める気は全く無い。
国民全員が税金を納めなくなったら、毎年40兆円の借金が膨らむどころの話ではなく、国として成り立たない。
それよりも、自分が目の前で払う消費税と違って、給与の天引きで徴収される所得税、住民税等について、もっと知っておくと良いのに。。。と、日頃思っている身として、この本は薄いし難しく書かれていないのでお勧めしたいのだ。

冒頭プロローグに、田中角栄氏の話が書かれている。
「(前略)かつて、田中角栄は「あなたの力の源泉は何か」と問われ、「法を知っていることだ」と答えた。」
と、紹介している。
まさしくである。
消費税や住民税の税金の事だけではなく、知っていなくて損をしている法律はたくさんある。
それに気付いて欲しいと思う一冊だ。

悪の会計学

元国税調査官 大村大次郎さん著者

悪の会計学 キレイごと一切なしの裏会計入門
「会計学」という文字に、何やら専門的な本?!と思われるかも知れないが、これは裏技の本である。
そもそも決算書というのは、誰(orどこ)に見せる事を前提に作成するかで作り方が変わってくる。
「決算書って一つでしょ?」と不思議に思われる方もいるかと思うが、確かに決算書は一つだが、契約や就業規則を作る一手間で経費扱いにしたりする事が出来たり、数字の見せ方にはいくつか方法があるのだ。
もちろん脱税や粉飾決算という法に触れる事をするのではなく、節税という範囲で出来る事だ。

この本は、元国税調査官が書かれているので、実経験から上手く節税している会社の実例方法を教えてくれる。
世の中には知っているのと知らないのとでは大違いの事柄が多く存在し、当然知っている方が得する。
何事も教科書通りに対応することも大切だが、結局のところどんな分野でも法律とは人間が作り出したもので完璧ではない。
当然全ての事例に対応出来ない事は多々発生する。
その中でちょっとしたテクニックを知っていれば、ずい分経営が楽になることもあるのだ。

これは是非、法人、個人を問わず経営者に一読して欲しいと思う。
そして自社の現状を見直して見るのも良い。
税金を納税するのは当然だが、税金の前に従業員に還元して士気を高める方法というのも少なからずあるので参考にして欲しい。

もちろん会計、税務の勉強中の方、経理担当の方、もしくは何となく興味があるかもと思っている方にはお勧めする。
文字も大きめで、エッセイのように読みやすい。
会話調に書かれている部分も多くすんなり頭に入ってくると思う。

タイトルに「悪」と入っているため、数字操作の犯罪臭が漂いそうだが、法的に認められた権利にテクニックを活用すると税務署は辛くなるという感じの話で「犯罪に手を染めよう本」では無いのでご安心をば。

松本人志の怒り 赤版

松本人志さん 著者

松本人志の怒り 赤版 これは、著者の週刊プレーボーイの連載コラムを編集したエッセイ?本である。
日常のニュースに対する読者からの「怒り」質問に、著者自身の経験やタレントである立場からコメントがさっくり書かれているので、待ち合わせや移動時間のちょっとした隙間時間に読むと良いかも知れない。

この本で取り上げられてる時事ネタは、2004年〜2008年掲載分のため、福田元首相、スピード社の水着、レンタルパンダ、冥王星降格など、当時のお騒がせネタが多いので懐かしく思える部分もあるが、一つ一つの怒り疑問を一緒に考えてみるととても興味深い読み物となる。

そもそも毎日報道されているニュースは、その情報のスピードについていくだけで、なかなか立ち止まり一つのニュースを考えることが無いような気がする。
所謂、情報麻痺しているのではないだろうか?
当事者はもちろん忘れられないが、無関係の視聴者は報道に一喜一憂するものの、翌日には過去の事。次の新しいニュースに一喜一憂。
テレビ番組は、視聴率のためにいかに面白いネタを扱うか、そのネタをいかに面白く報道するか、という事に集中し、本来伝えるべき事項が間違って伝わる危険性を含んでいる。

著者はお笑いタレントであるので、読者が投げかける怒りの疑問に対して、茶化して面白く書いていると思いがちだが、実際は一つ一つまじめに考え、著者自身の意見を掲載している。共感する部分もあるし、これを読みながら自分自身の意見を出していくと、改めて世の中大丈夫か?と心配にもなる。

さらりと読み進むもよし、気になった怒りを一緒に考えるもよし、面白いか面白くないかは読者の読み方次第だろう。

公認会計士VS特捜検察

 公認会計士 細野祐二さん著者

公認会計士vs特捜検察 この本は、有価証券虚偽記載罪により逮捕され、現在最高裁に上告中の現役公認会計士である著者の、被疑者として取調べを受けてから逮捕され、最高裁への上告まで、壮絶な実体験と経過、その罪状となる経済事件を時系列に沿って書かれたノンフィクションである。



以前、読書カテゴリーで紹介した「法廷会計学VS粉飾決算」の著者でもあるが、実はこの本は、数ヶ月前に買って読む機会を失っていた本である。
何故なら、この本は431ページのハードカバーなので、持ち歩きが厳しいと思っていたのと、当時マイブームであった経済小説と勘違いしていたからだ。
友人に「法廷会計学VS粉飾決算」を紹介され、先にこちらを読んでから小説でも何でもない、実録経済事件本だ?!
と、ようやく気付いたこの1週間で読み上げた。

実際の事件が、粉飾決算や株価操縦と言われる会計、経済の専門的な話なので、会計に明るくないと難しい話にも感じるかも知れないが、問題なのは、一度疑わしいと思われたら、その無実を晴らすのがいかに難しいかと言う事だ。
この本では、検察の言うことがどれだけ矛盾しているか、捻じ曲げられた真実と無実の罪を着せられている著者の身上が詳細に書かれているが、この本で無罪確定!とはならない。
物的証拠、証言、証人、同業との比較、ありとあらゆるもので無実を証明していかなければならない。

本によれば、その証言や証拠ですら歪んで作り上げられる所謂捏造が起こり、かつそれが如何に矛盾していても「有罪」の判決が下りる。
それがまかり通っているのであれば、本当に怖いことだ。
例えば、昨日食べた夕飯が炒飯だったと本人が証言し、洗いかけの中華鍋、お皿、テーブルにはご飯粒等の物的証拠が残っていたとしても、裁判で「ラーメンだった」と決まれば、ラーメンなのだ。
。。。わかりやすく表現しようとしたら、すっかり自分の欲求が前面に出てしまい緊迫感を無くしてしまった。。。

ある日突然何かの事件の容疑者となった時、全く自分に見に覚えがなくても、それが立証出来るか?相手は経験を積んだプロである。
そんな事を考え込んでしまった。

また、この本を読んで、今まで勘違いしていた事に気付いた。
弁護士は自分を守ってくれる人ではなく、自分の主張を法律用語にし、代弁する人だと言う事だ。
言葉の通じない国に通訳さんが必要なように、法廷という場においてもその存在は必要なのだが、結局、自分の身は自分で守れというあたり前の事であり、彼等は救世主では無い。
全ての弁護士、検察、裁判官に当てはまるとは言わないが、彼等も仕事なのだ。

弁護士は勝訴にて成功報酬を得る。
例え真実がどうであれ、裁判に勝ちに行くのかも知れない。
勝てなくても、経験上の落とし所に沿った判決を取りに行くという技もあるのかも知れない。
そんな事を考えていると、ドラマで見る「先生何とかして下さいよぉ!!」という無実の被告は、実際の場において自分で何とかしなければいけないんだと改めてドラマはドラマを感じた。

現代社会は、たくさんのルールで成り立っている。
会社にしても学校にしても、地域の生活、公共の場、スポーツ、遊び、他人とのコミュニケーション、全てにおいてルールがある。
しかし、そのルールをどのように解釈し、どう表現するかは、各々の判断基準だったりする。

さて、来年から裁判員制度が始まる。
これだけ情報があるにも関わらず、どのような運用でどう対応してなんて事は、実際自分が選ばれてから調べようと思っていたが、経済事件の裁判員になる事もあるのだろうか?
経済に関わらず、専門的な裁判ではその用語を知らずに判断が出来るのだろうか?
冤罪という事件がある以上、裁判員一人一人の責任は大きい。

使える!「徒然草」

斉藤孝さん 著作

この本は、古典の「徒然草」の中から、現代の身近な日常生活にも使える教えや格言などを抜粋し、解りやすく解説し生きる知恵として書かれている。

ちなみに私は、徒然草は、学生時代にちょろりと習った後、一度も読んだことがない。
しかし、この本を読み終わった今、改めて「徒然草」を読んでみたいと思った。
作者である吉田兼好が過ごした当時の何気ない日々の中で感じた事が、現代もほとんど変わらないと思えるからだ。

職場、家庭、学校などの人が集まるコミュニティーの場において、こうすると楽になるという知恵であったり、物事の上達の秘訣などは、今まで気負っていた自分の考え方が、すぅ〜っと力が抜ける感じで納得させられる。

例えば、
「勝とうと思うな、負けないようにしろ」
という意味の本文を解説した章がある。
個人的に、今まで「負けん気が強い」や「負けない」と言う言葉が好きではなかった。言葉の中に「負け」と入ると縁起が悪いような気がしていたからだと思う。
しかし、この章では何事も勝ち続けるという事はないのだから、まず負けないようにする事を考えて挑めと教える。負けないように挑んでいれば、いつか勝つこともあるからだと。

この章を読んだときは、目から鱗がポロポロ。
勝つためにはまず負けない事!と、素直に思えた。
年を取ったという噂も。。。
いやいや、ようやく先人達の教えの意味が理解出来る程、経験を積んできたという事にしよう。

そんな感じで、ビジネスマンに限らず、ちょっとした人生の知恵としてこの本はお勧め。
一つ一つの解釈が簡潔に書かれているので、隙間時間にチビチビ読んでみては如何でしょう。

地球環境・読本

別冊宝島編集部編

「20年前からなにも変わらない地球環境問題」をテーマに、20年程前に発行された「別冊宝島101号 地球環境・読本」の改定本で、気象学者や理工学研究員、経済学者などの専門家が、各カテゴリー別に環境問題の原因と結果、その対策の間違いについて指摘している。

「異常気象」「自然保護主義」「エネルギー危機と食糧問題」「ゴミ問題」「誰が地球を汚したのか」の5部からなるカテゴリーに、数名の専門化が分析や研究結果を元に書かれており、エッセイとは言わないが簡単簡潔で読みやすく、一つ一つの問題定義が、環境問題に興味・関心がある自分としては考えさせられる内容だった。

「割り箸が森林資源の無駄使いで熱帯林を破壊している」事について、本当に破壊しているのかを生産量、輸入量、原木使用量の資料などを基に本当のところを指摘していたり、「植林により砂漠緑化」について、砂漠のない日本が砂漠のある国におせっかいを焼くのは、「先端技術を採用し、日本製品または工場プラントを売り込むことを目的としていると思われる。(本文抜粋)」と、ぴしゃり。
この発言には、前後の動機説明がなされているので、ここだけを一読して「植林は役にたたない!」と、早急な判断をされないように願う。

その他、「食糧援助」について、「ゴミ焼却」についてなど、よく内容を把握せずに間違って信じているであろう事を指摘し、本当に考えなければいけない事はこういう事ではないだろうかという提示をしている。
これが20年前に発行された本で、現在とほとんど変わらない問題定義に驚く。
もちろん改善されている部分も多いとは思うが、根本的な議論は昔から変わってないように思える。

ここ数年、エコロジーがエコビジネスとして経済の中心になってきているが、「エコ」ブランドに便乗しているのでは?と思われるモノも無きにしも有らず。
自分が行っているエコ活動を、たまには何のためになっているかを考えるのにも良いきっかけ本だ。


シロクマのことだけは考えるな!

植木理恵さん 著者

著者は心理学者・臨床心理士である。
「シロクマ」という題名からして、環境関連本かと思い手にとってみたのだが、「元気になる心理術」「頭がよくなる心理術」「人をコントロールする心理術」「人をトリコにする心理術」と言った4つの項目で、各項目のシチュエーション別に心理分析や対処法が書かれている。

最近また難しい本ばかりを読んでいるので、ここで頭を休める思いと、パラパラ立ち読みした感じでは、読みやすそうだったのでお買い上げしてみた。

読んでみて「ありゃ?!」と思ったのは、著者が提示している心理術は何気に自分も実践している事だった。
例えば、忘れようと努力することについて。
私は、昔から何かしら思い悩んだ時、気晴らしして現実逃避をするより、とことん悩みモードに入る。
食事する事も放棄し、それはそれは深く深く悩みと向き合う。
性格上、自分に嘘もつけなければ、誤魔化しもきかない。
聞こえはカッコいいが、単なる不器用さんだ。

そんなこんなで、ドップリ悩み込むと流石に頭が疲れてきていつの間にかグッタリ寝てしまう。悩みが深いと1〜2日寝ない事もあったが。
そして翌朝、スッキリと目覚めるのだ。
この方法は向き不向き、性格にも関係あると思うが、あんまりにも悩み過ぎて飽きるのだと思われる。
もう一度言う、「飽・き・る」のだ。
これはやはり性格が強いのかなぁ。。。あんまり同じ事を考え続けていると次第に飽きてきてしまう。
しかも何の解決策も出ないまま、悩み放置。

この本の中でも「脳のメーターが振り切れるまで考えること!」をお勧めしている。
そもそも、人間は駄目と言われるものに魅了され、幸せが続くと不安に苛まれる。
そのことを、失恋、宝くじ、カリスマホスト、フシギちゃん、などのキーワードを使って書かれているので、なるほどぉ〜と思わせる。

「落ち込んだ時は楽観的に!」という心理学の本に飽きた方には、一風変わったこの本はお勧めである。
ちなみに、ネガティブ、マイナー思考で!と、声高に推奨している本ではなく、研究に基づいた心理分析をしているので、読者も納得する部分があるのではないかと思う。

法廷会計学VS粉飾決算

細野祐二さん著者

著者自身も、4年前に粉飾決算の容疑者として起訴され、現在最高裁に上告中の公認会計士である。
この本は、世間でも有名な経済事件である「日興コーディアル粉飾決算」「ライブドア」「(旧)中央青山監査法人(みすず監査法人のち昨年7月解散)」「日本航空」の粉飾決算疑惑を、詳細に調査しわかりやすく書かれた本である。

有名な経済事件を取り上げているため、資本取引がよくわからない方や、会計に詳しく無い方でもニュースなどで頻繁に流れていたので、聞き覚えはあると思う。
しかし、実際何が不正で何が問題で何が事件で、という事は報道を受けるままで根本的な内容を知らないのではないだろうか?

報道は時として危険である。
報道する側が、その事件内容の詳細を調べる前にニュースにしてしまったり、専門的な内容に詳しくないのに上辺だけで判断してしまったり。
全ての人が経済や会計に詳しいわけでは無い。

視聴者は、与えられる情報をそのままに受け入れてしまうがために問題の本質を見失いがちになる。
これは、経済問題に限った事ではなく、現在騒がれている疑惑の報道全般に言えるのでは無いだろうか。

さて、この本は、とても難解な粉飾決算疑惑を紐解くように細かく説明されており、知識が少ない方でも十分に理解は出来る。
それほど丁寧に事件の詳細が書かれている。

小説ではなく、実際の事件を取り上げ、実名で疑惑を提示しているこの本は、是非お勧めである。
世界の経済動向が不安定な今、何が起きていて何が起ころうとしているのかを知るために、私達は少しずつ資本取引とは何かを学んでいく必要があるのでは無いだろうか。

ラーメン屋VSマクドナルド

竹中正治さん著者

著者が、アメリカで参加されたエコノミック会合や、講演、シンクタンクで議論された事柄や、アメリカ生活の中での実体験に基づいた視点から、時事問題を取り上げ、日本とアメリカを対比した本である。

シンクタンク、エコノミックなんて書くと、小難しそうに感じるが、「日本のアニメとディズニーなどの米国産アニメの違い」であったり、「ディベートするアメリカ人VSブログする日本人」など、身近なものを取り上げており、説明口調ではなく、著者の感じることをツラツラと書いているので、エッセイ的に読める部分が多くある。

もちろん「”新銀行東京”失敗の本質」というカテゴリーで、「融資における審査モデルの限界」や、「スコアリング方式の確率的アプローチ」といった具合に経済的用語が飛び交うカテゴリーもある。

さて、その中で、とても日本人の本質を表しており、かつ共感したところがあったので簡単に紹介したい。
「希望を語る大統領VS危機を語る総理大臣」という項で、日本の危機管理が甘いのはなぜか?について

「過ちは確立的にどうしても起こるものであり、それを前提に小さい失敗を許容しながらも、それを大きな失敗につなげない工夫が必要なのだ(中略)「こうすればうまくいく」「失敗しない」ことを学ぶ方法ばかり重視した教育からは、想像力を養う機会は生まれない。(本文より)」

で、しめられている。
この項を読んだ時に、思わず「そうそう!」と頷いた。
失敗は必ずある。
何かを100回やって、100回成功する人はまずいないと思う。
例え100回成功しても、200回だとどうか?300回だと?
大切なのは、失敗から学ぶことであって、失敗しないことを学ぶことではない。
その事を著者は爽快に書き上げている。

経済的な視点からの話だが、さほど小難しくもないのでお勧め。

株主代表訴訟

牛島信さん 著者

企業法律小説である。
名門の百貨店で公私混同する会長、その取り巻きである取締役達、取締役の職務遂行を監査すべきはずの監査役の怠慢に対し、株主からの訴訟アラームが内容証明郵便で届くところから物語が始まる。

この話は、自分の置かれている立場が商法上どれだけの責任を負っているかという事を知らしめ、「会社とは、株主とは、役員とは、監査役とは」が、わかりやすく書かれている。
それもそのはずで、著者は現役の国際弁護士である。

ここ数年、メディアで話題になる企業買収に関する話題をキョトンと他人事に感じている勤労者の方、またその配偶者、家族の方も、企業とはどういうもので、役付きの方々はどのような任を負っているのかを、この本もしくはこの著者のシリーズを一読して知って欲しいと思う。

情やしがらみで成り立つ事柄も多くあるが、法律上で負わなければならない責任もある。
仕事に限らず、生活する上でもたくさんの法律があり、そのほとんどは知らずにいるが、せめて自分や自分の周りに関する法律は知っておきたい。
しかし法律用語は難しい。
なんて挫折する方は、読みやすい小説などを自分に当てはめていくと、以外に頭に入ったりするものだ。

著者の作品は、ほとんど読破している。
面白いのでサクサク読んでしまう。
頭を悩ませる小説では無いので、読書の秋にお勧めである。

松本人志の怒り 青版

松本人志さん 著作

これは、週刊誌の連載を編集し書籍化された本である。
一般から投稿される怒りの質問や意見に、著者の考えや日常起こった出来事を折込みながら綴ってある。

前回、頭を使う書籍に挫折したので、今回は本当に活字だけ楽しんで頭を休める本をチョイスした。
そして、それは見事に成功する。

この本は青版と赤版の2冊あり、今回は青版を読んだ。
こちらは、かなり大人向けな質問が多く含まれているので、通勤電車で読み始めた初日、本を閉じがちに読んだ。
そして、2日目からは自宅で就寝前に読むに至る。

日常生活で遭遇する様々な出来事に「怒り」の矛先が向かうのだが、数ある投稿は、ほとんど外部から自分が被る損に対する不満で、「無駄」に関するものが多い。
読みながら、「わかる、わかる」とも思えたし、逆に「そうかなぁ?」なんて改めて考えてみたり。
さっくり読めて、何かしらの待ち合わせの時間潰しなんかにも良い1冊だ。

気になった1件の質問「選手ファン?球団ファン?」は、野球に関する質問だが、野球に限らず、サッカーや他のスポーツで応援するチームがある人には是非読んで見て欲しい。
結構自分の意見を出すのが難しい質問である。

不謹慎な経済学

田中秀臣さん著者

この本に2度目の挫折。
本日、勇気を持って読み終わる事を棄権する。
そして声高に言おう!
「間違えた!」
いや、間違えたという言葉が正しいのかはわからないが、私は「さおだけやは。。。」や、「スタバではグランデ。。。」「おみくじの原価は。。。」(以上、全て書籍)的な、経済をわかりやすく書いたエッセイ的な読み物のつもりで、この本を購入した。

この本は第16章からなるのだが、第6章までは、パリスヒルトンやツンデレなど、世間の話題になった事項を織り交ぜて書いているので、何とか読めたのだが、全般的に学問の紹介本のようで、とにかく参考本の引用が多く、まさしくレポートのように思えた。
正直、この当時「やばい経済学」「まっとうな経済学」といった本を読み漁っていたので、その流れでこの本を手にしたのだが、明らかに前筆した2冊の本と書き方が違う。
この本を読んで、初めて自分が引用本が苦手なのだと思い知った。

完読する事が出来なかったので、ご紹介には至らず。
この本のせいでは無いが、やはり本を読むにも相性があるんだろう。
2度目の挑戦も、やはり前回と同じくらいのところで挫折。
しばらくは、頭を休めた本を読もうと思う。
今回、中々読み進まなかったために、既にストックが溜まっている。
しかし慌てる事は無い、秋の夜は長いのだ。

世界一利益に直結するウラ経営学

日垣隆さん・岡本郎さんの対談本

作家・ジャーナリストである日垣さんと、経営コンサルタント・税理士である岡本さんが、実体験や客観的思考で、税制を踏まえた経営のあり方や、渦中の経営者が陥り易い思考、現代社会ビジネスの落とし穴などを、各カテゴリー別に会話調で書かれている。

この本は、「こうあるべきだ!」や、「こうすると経営は上手くいく!」と言ったような、攻略本でも応援本でもない。
あくまでも、対談者達が見てきた経営者達の動向から、自分達ならこうする、と言った意見本に近い。
それを参考にするかは、読者次第だろう。

本の中で、「経営も時間」と書かれた部分がある。
前回の読書本紹介「残業ゼロの人生」でも書かれていたように、彼等も時間管理を重要視している。
やはり、人間はリミットがあれば、そこに力を集中させられる。
経営者に限った事ではない。

そうは言っても、日本社会の性質上、従業員が組織の中で個人ベースの時間管理をするのは難しい。
上司より先に帰社するのは気が引ける、営業成績を上げてないのに定時で帰社、なんて事は、周りが白い目で見ているような気がして良心の呵責に苛まれる。
そういった風土は今も色濃く残っている。
やはり、経営者、経営陣からの意識改革が無ければという事なのだろうか。

時間効率で経営が上手くいくとも思わないが、仕事がお金を稼ぐ手段である場合、1日を充実させる方法は、やはり仕事外の時間を増やす努力しかないだろう。

「残業ゼロ」の人生力

吉越浩一郎さん 著者

著者は、有名な「早朝会議」や「がんばるタイム」などを実企業で取り入れた経営者で、私が素晴らしいと共感している人である。

この本は、人生、それも現役引退後の過ごし方についてアドバイスしている本である。
「アドバイス」というのが適切な表現かは分からないが、現役、つまりお金を稼ぐための仕事を終えた後の人生の過ごし方について、現実的な意見と著者の近況、そこに至るまでに準備していた現役時代の事を織り交ぜながら書かれている。

そもそも、何に共感しているのかと言うと、時間管理だ。
著者が現役時代(今もフェイドアウトしながらの現役を続けているが)、「ノー残業デー」という、会社から残業禁止令を発令したドキュメンタリー番組を見た。
丁度その頃、私も仕事をする上で時間管理の重要性に気付いた時でもあり、羨望の眼差しで見入った。

そのドキュメンタリー番組でも、この本でも、結論から言うと、「時間管理をしっかりする事が人生力を上げる事であり、その時間をどう管理するかは、各々、自分達で考えなければならない。」と言う事だ。
その先に、理想(予定?)どおりの人生が待っているはずだし。

一つ言える重要な事は、人生は、自分が思っている以上に長い。
定年後にゆっくり楽しむから、今はがむしゃらに働いて!
と、仕事漬けになっているその人生の先には、緩やかな日々が訪れる。
昨日まで満員電車に揺られ、1日中電話やメール、会議などに忙殺されていた日々が、次の朝目覚めると全てから開放される。
開放されるという事は、会社の肩書きは無くなり、机やロッカーも存在しない。しかも仕事上の人脈もほぼ無くなる。
当然だ。会社同士で取引しているのであって、個人と取引しているのでは無い。

さてその時、夢のような自由を満喫するか、気が抜けて途方に暮れるか、どちらを選べるかは、現役時代の今から作り上げて行かなければいけない。
著者は、そんな思いから、現状の危機感を踏まえてアドバイスをしているのだと思う。

難しい本ではなく、グローバルな著者の実体験エッセイ?としても、さっくり読めるので秋の夜長の読書にお勧めです。

「温暖化」がカネになる

北村慶さん 著者

さて、のっけから辛辣なタイトルの書籍。
が、しかし、実際こう思っている人は世界中にたくさんいるだろう。
いい意味でも、悪い意味でも。

まず、この本は3章からなっている。
第1章では、あらゆる場面で話題になる「地球温暖化」問題について、
「エアコン設定を28℃にし、クールビズにしたものの、どの程度地球に役立っているのか分からない、そもそもなぜそんなことをしなければならないのかも知らない」という一般市民の理解について、それが普通の感覚であり、現実だという視点から始まる。
そして、「悪いのは、本当に人類なのか」の疑問点を、研究されている地球の過去の気候の変化や、同じ太陽系の水星や金星の比較、大気に含まれるCO2やメタン、一酸化ニ窒素、代替フロンの説明をしつつ、温室効果ガスについて、図を盛り込みわかりやすく書いてある。

第2章では、排出権取引とは、何がどううごめいていて、世界各国の思惑は何かということから、日本が京都議定書を守るために「排出権」を税金で買うことが既に決まっているが、その「排出権」とは何か、また、それに目をつけるヘッジファンドについて、キャップ&トレードと言われる仕組み、企業が絡んでの金融事情が、さっくりと書かれている。
金融知識が無くても、わかりやすく書かれているので、この機会に「排出権取引」について簡単に把握するのも良いかと思う。
金融専門の方には、触りのスキームしか書いてないので、あくまでも本の流れとして読んで欲しい。

そして最終第三章で、現在の資本主義経済の考え方が、人類にとって都合の良い仮定の下に作られている事の危険性を指摘し、今後、地球と人類双方にとって、都合の良い経済学を考えるべきだと提案している。

現在、少子化ばかりが前面に出るが、地球人口は増加の加速度を増している。
この本の中で著者は、人類の生存と地球環境を同時に満たすための究極の方策として、理論上考えられる仕組み「人口増加権」の売買を紹介している。
人類が増える以上、豊かな生活を望み、地球に負荷をかけることは避けられない。
そして「地球を汚染する権利」と批判の側面をもつ「排出権」が売買されたことから、「人口増加権」の売買は、空想ではなく、現実として予想されると。

ちなみにこの本は、環境問題に便乗してお金儲けをする事を否定している本ではない。
むしろ、人々の善意に頼ることで地球環境を守るという事の限界から、人々の欲求である「お金儲けの欲望」を刺激することで地球環境が守られるような仕組み作りの必要性を伝えているのである。

人は誰しも豊かになりたいという欲望がある。
そして、一度手に入れた便利さや豊かさはなかなか手放せない。
失って気付く大切さ。。。そうならないように考え、行動していかなければいけないのではないか。深く頭を悩ませるのである。

お客に言えない「原価」に秘密

マル秘情報取材班[編]の、雑学的書籍である。

あまり難しい本ばかりを読んでいても眠くなるので、たまに頭に優しいエッセイや雑学本も読む。

この本は、
ジュースの自販機や食べ放題、飲み放題の「得する原価」
安売りメガネ、たばこ、化粧品などの「日用品の原価」
漫画喫茶、家電ディスカウントストア、中吊り広告の「ウラの原価」
自費出版、打ち上げ花火、格安海外パックツアーなどの「趣味と遊びの原価」
1000円理髪店、コインランドリー、100円ショップなどの「暮らしの原価」
と、5つの項目に分け、その原価の詳細について書かれている。

調査資料として、綿密に分析している訳では無いので、1つ1つの項目が2〜3ページで終わるため、隙間時間の暇つぶしには面白い。

その中で、早速参考にさせて貰ったのが、「うなぎの得する原価」。
うなぎ屋さんで、松・竹・梅どれを食べるのが一番お得かについて書いてあったのだが、先日うなぎ屋さんにて、本に書かれてある通り注文。
本当か嘘かは別として、本人達は得した気分になっているので大変満足した。
情報に踊らされてる感もあるが、元々そこのうなぎは美味しかったりもする。
まぁ、結局のところ、消費者の満足度が価格を決めるのだろう。

+6℃ 地球温暖化の最悪のシナリオ

著者:マーク・ライナス 監修・翻訳:寺門和夫さん
よ、ようやく完読。

この本は、世界中の科学者の研究成果を元に、今後100年間で6℃上昇されると言われている世界の平均気温を、1℃上がるとどうなるか、2℃あがるとどうなるか。。。6℃上がると。。。という具合に、1℃上昇するごとに世界で起こると想定される事象が詳細に書かれている。


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ドイツは苦悩する

川口マーン恵美さん 著作
実に感慨深い本である。
ドイツに住んで20数年の著者が、「福祉大国の終末」「EU加盟」「ベルリンの壁、東西統一の誤算」などの国家的問題から、「ゴミのリサイクル」「ヨーロッパ下位の教育レベル」「離婚観念の変化」「メディアの流行におかされる子供たち」と言った社会問題を、外国人として客観的に書いた本である。
客観的と言っても、著者自身はドイツ在住なので、年金や医療保険、子供たちの教育問題に直面している。


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水戦争

柴田明夫さん 著作
ヴァーチャルウォーターをご存知ですか?

輸出入される農産物や、製品を生産する際に使用している仮想水の事で、つまり原産地で作られる製品に使った水が、輸入国で消費される間接的な水の事である。
日本は、食料自給率も先進国では圧倒的に低く、輸入大国なのでこのヴァーチャルウォーターを大量に輸入している。

水の惑星と言われる地球で人類が利用出来る淡水は驚く程少なく、その淡水のうち7割近くは南極や氷河、万年雪などに閉じ込められている。つまり人間が利用しやすい河川や湖沼の水は3割ほどしかない。

そんな話から始まるこの本は興味深い話が満載である。
数値やデータを織り交ぜながら、世界的な水問題、日本の河川管理、地球温暖化がもたらす水と食料の危機などわかりやすく書かれている。


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MBOマネジメント・バイアウト

牛島信さん著書
大企業グループのワンマンオーナーと、そのオーナーに内紛を利用して乗っ取られた老舗デパートの雇われ社長が、自分、従業員、デパートの存続をかけてMBOを勃発させる企業小説である。


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自然素材で毎日安心ナチュラル生活

ナチュエコ・コンフォートプロジェクト 著書
重曹、ビネガー、精油を使った掃除やスキンケアの作り方や利用法を写真付で紹介しているナチュラル生活本である。


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環境問題のウソのウソ

山本弘さん 著書
以前書いた「環境問題はなぜウソがまかりとおるのか」の反論本だ。
正直、正直な感想は....読んでいてあまり気分の良い本ではなかった...。
私は学者でも物書きでもないので一般庶民の極々シンプルな感想なのでこの本に感銘を受けた読者の方は素人の戯言と思って頂ければと思う。


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エコバッグ ブック

塚本太郎さん、赤木真弓さん 著者
お二人が集めている世界(主にドイツ)のエコバッグを素敵なカラー写真で紹介している書籍である。
これを見ると本当にドイツにはたくさん素敵なオリジナルエコバッグがあるなぁと関心してしまう。(ここに紹介されている以外にも世界中にはもっともっとオリジナルのバッグが作られている。)


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環境問題はなぜウソがまかり通るのか

武田邦彦さん著書。
初版は2007年3月12日に発刊されているが、最近の環境問題ブーム(....と言う言い方はよろしく無いんですケド)により、本屋さんに設置された環境本フェアにて目に止まりお買い上げした。

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